初年度(2021年度)は、授業観察を用いた教師研修プログラムに過去に参加した日本語教師のインタビューデータの分析を行った。そして、授業観察において教師間の協働を支える要因の1つとしてファシリテーターの存在があり、ファシリテーターに求められる役割を具体的に明らかにできた。この研究知見を踏まえて、同年度には調査協力機関の日本語学校と連携の上、次年度からのファシリテーター研修を含む授業観察の実施計画を立てた。 次年度(2022年度)は、9月から12月にかけて協力機関の日本語学校の専任日本語教師がファシリテーターとなる形で授業観察を実施した。研修終了後は、授業者・観察者の立場で参加した3名の非常勤日本語教師が回答した質問紙調査の結果や、リフレクションシート、授業教案などの内容を分析した。その結果、3名はファシリテーターが論点の整理や時間の管理などの役割を果たしていたことを肯定的に評価していたことが明らかになった。また、2022年12月にはファシリテーターに対するインタビュー調査を実施した。このインタビュー調査からは、他の参加者3名の研修への能動的関与の姿勢と専任に正解を求めようとしない姿勢が、3名との同僚性を感じられる要素として作用していることを明らかにできた。 最終年度(2023年度)は、8月から9月にかけて前年度参加者の3名へのインタビュー調査を、2024年3月にファシリテーターへの追加のインタビュー調査を実施した。その結果、日本語学校からの組織化された研修への参加機会の提供が教師コミュニティの形成において重要であることがわかった。そして、最終年度は他の日本語学校が同様の研修プログラムを実施できるようガイドブックを作成することができた。
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