研究課題/領域番号 |
21K20253
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研究機関 | 鹿児島女子短期大学 |
研究代表者 |
今村 幸子 鹿児島女子短期大学, 児童教育学科, 助教 (30912539)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 就学前療育 / 職員研修プログラム / 行動分析学 / 保護者の障害受容 / 就学に必要な力 / 教員の意識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、療育を担当するスタッフに向けた指導法に関する研修プログラムの作成である。その前提として、療育指導が目指すべき方向性の検討を行った。具体的には、幼児教育関係者と小学校教諭の支援の必要な子どもの姿についての意識について質問紙による調査を行った。目的は、療育を受ける子どもが日常を過ごす場所である幼児教育機関と就学先の小学校教諭がどのような子どもを通常の学級で教育可能であり、支援が必要であるという意識を持っているかについて知った上で、療育の目標を検討するためである。調査の結果、小学校教諭や幼児教育関係者は、就学までに身に着けてほしい力として「話を聞く力」「生活習慣」「コミュニケーション力」について挙げていた。また、生活習慣の具体的内容について、幼児教育関係者は「持ち物の管理ができること」、小学校教諭は「自力で登校する力」を挙げていた。また、学習に関して小学校教諭と幼児教育関係者に共通して「着席して一定時間学習に取り組む力」が挙げられた。対人関係について両者から「感情をコントロールする力」が挙げられた。支援の困難性について、共に「保護者との共通理解の難しさ」を挙げていた。これらから、就学前療育においては、上記の力を身に着ける指導に加えて、保護者が子どもの困難さを理解するためのアプローチも行う必要性がある。以上より、今後のプログラム作成において調査の中で求められている力をつける事、保護者の理解が進む事を含むプログラムを目指す。さらに、療育スタッフに向けた研修では、実践に活かしやすくするために、多くの事例を用いた内容としたい。そのために、現場で実際に療育遂行が困難だった場面の情報を収集した。その際、場面の内容に加えて、その時のスタッフの対応についても情報を収集した。そのことで、現在の療育の現場で行われている実践の傾向を把握し、研修プログラム作成に反映させたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、就学前の児童発達支援における療育を担う指導者向けの研修プログラムを作成することを目的としている。その作成までの段階として、①療育を担うスタッフが経験した療育遂行の困難場面についての情報収集②収集した療育遂行困難場面についての指導法の検討③研修プログラムの作成という3つの段階を想定した。しかし、この段階の前として、そもそも就学前の療育が目指すべき方向性を検討する必要性が生じた。そのため、2021年度には最初に県内の幼児教育関係者と小学校教諭に質問紙による調査を行い、就学までに子どもが身に着けるべき力についての検討を行った。その後、児童発達支援センター及び事業所の職員を対象に質問紙を用いて、①の段階の内容であるそれぞれが実際に経験した療育遂行困難場面について調査を行った。本来であれば、この段階で実際に療育を行う場面を撮影し、スタッフの現時点での対応の仕方を記録しその傾向を検討する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の県内における新規感染者数の増加のため、実際に療育現場を においてスタッフが実際に行った支援・対応について記述してもらった。約20名からの回答があり、60場面程度の情報が集まってきているが、数か不十分であると考えている。さらに、挙げられた場面における対応の仕方について、本人の意識化における部分のみの記述となるため、体の動きや意識の向け方といった詳細な部分の情報が十分ではない。今後は、より多くの情報を集め、分類した上で指導法の検討を行い、プログラムの作成につなげていく必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、療育を担当する児童発達支援センター及び事業所の職員向けの研修プログラムの開発を行うことを目的としている。2021年度は、療育が目指すべき方向性を検討するために、幼児教育関係者と小学校教諭に対して質問紙調査を行い、就学に向けて療育機関における指導を通して子どもが身に着けるべき力についての調査を行った。ここで得られた内容は、療育を行う際の目標設定の検討の部分に反映する。また、児童発達支援センター及び事業所において療育を担当するスタッフを対象に、それぞれが実際に経験した療育遂行困難場面についての情報収集を行った。しかし、療育遂行困難場面の詳細な検討のために予定していた実際の療育場面の観察・撮影については、新型コロナウィルス感染症の県内における新規感染者数の増加によって実施することができなかった。そこで、2021年度においては書面によるスタッフへの調査によって、困難場面において自身が行ったアプローチ・対応について回答してもらった。しかし、その調査の結果は有効ではあるものの、自身が認識した対応やその理由についての情報のみの収集となり、細かなスタッフの動きや無意識での対応についての情報は得られなかった。しかし、行動分析を基礎として療育を行う場合には、細かな体の動きや意識の向け方等も重要となる。そのため、2022年度には実際の観察・撮影やスタッフに対しての半構造化面接による指導の糸の聞き取りを行う予定である。さらに、それらの情報について行動分析を基礎に場面の性質や対応の傾向についての分類を行う。そのうえで、必要な研修内容を検討し、実際にスタッフが経験した事例を用いた発達障害の子どもに対する指導法に関する職員研修プログラムの作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で予定していた療育の観察・撮影やスタッフへの面接が新型コロナウィルス感染症の新規感染者数の増加により延期となった。そのため、撮影や録音のための機材(ビデオカメラ一式やICレコーダー等)の購入ができていないが、現在選定中であり次年度初めに購入を行う予定である。また、書籍についても、撮影等の情報収集が進んだ後に最終の選定を行う予定であり、次年度の購入となった。以上より、次年度前半において、書籍や撮影・録音のための機材の購入を中心に行う予定である。
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