研究課題
自治体の2021年度前期5歳児発達健診二次健診参加児を対象に調査を行い、69名のデータを取得した。運動経験については、子どもの保護者に対しアンケート形式で、子どもが通う保育園・幼稚園・こども園以外での、指先の細かい動きを伴う活動(微細運動)、全身を使ったバランスを必要とする活動(バランス運動)、ボールを投げたりキャッチしたりする活動(ボール運動)の頻度を、5歳現在および年少~年中(3~4歳)それぞれの時点について回答を求めた。協調運動能力は、Movement Assessment Battery for Children第2版(MABC-2)を用いて、手先の器用さ、バランス、ボールスキル領域に分けられる8課題を、対面にてアセスメントした。ここまでに得られたデータの解析の結果、5歳現在・年少~年中時点ともに、微細運動およびバランス運動に比べ、ボール運動の頻度が少ないことが示された。アンケート結果と協調運動能力テストの得点の関連を検討した結果、年少~年中時点のボール運動の頻度とボールスキル得点に有意な相関関係が認められ、年少~年中時のボールを投げたりキャッチしたりする活動の頻度が少ない子どもほど、5歳時点のボールスキルの得点が低いことが明らかになり、3~4歳時点のボールを投げたりキャッチしたりする運動経験の少なさが、5歳時点の同様の運動能力の低さに影響を与えている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
Covid-19の感染拡大の中でも可能な限りの調査は実施できたが、健診の実施環境の変更や従事スタッフ数の不足などにより、当初予定していた計測の一部は実施できないものがあった。より実際の調査場面に即した形での運動能力の客観的指標の計測方法を再検討する必要が生じたため。
次年度も引き続き、2021年度後期・2022年度前期5歳児発達健診二次健診(1期分で70~80名参加予定)にて、保護者へ対する運動経験についてのアンケート調査と、参加した子どもへ対する協調運動能力の直接評価を行う。ここまでに取得できているデータと合わせ、1年分(140~160名)のデータの蓄積が完了し次第、DCDを含む神経発達症診断による群分け、もしくは発達特性の評価尺度得点による統制をして統計解析を行い、DCD児における傾向、および他の神経発達症傾向による影響を明らかにする。また、年間を通して実施される3歳児発達健診精密検査においても、5歳児健診二次健診同様にデータ収集を行い、より若年齢(3-4歳時点)における実際の協調運動能力と運動経験の関連を検討する。3歳児発達健診精密検査においては、すでに協調運動能力のアセスメント、微細運動の一部に関しては動画での運動の様子の記録を行っており、動画データを用いた動作解析を並行して行う。運動能力の客観的測定方法については、さらに適切な手法を再検討し、上記調査場面においてデータ取得・解析を行っていく。
今年度収集したデータの解析結果も踏まえた上で、より調査場面に即した形での運動能力の測定を行うべく、モーションキャプチャー解析およびその他の運動能力の客観的測定方法を再検討し、測定機器を購入する必要が生じたため。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
Child Psychiatry & Human Development
巻: 52 ページ: 311~320
10.1007/s10578-020-01013-5