研究課題/領域番号 |
21K20258
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
石田 修 茨城大学, 教育学部, 助教 (50909926)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 重症心身障害児 / 心拍 / 人工知能 / 応答評価システム |
研究実績の概要 |
重症児は周囲の働きかけに対する応答が乏しく,行動観察による実態把握が困難である。近年,心拍数の変動をもとに重症児の応答を評価しようという試みもあるが,子どもの感覚過敏や心拍の計測・分析の難しさから教育実践で活用するには障壁があった。本研究では,測定機器や心拍変動に関する専門的な知識・技能がない教員でも,簡便に実施できる重症児の実態把握の方法を確立することを目的とし,①人工知能を用いた重症児の応答評価システムを開発する。さらに,②重症児教育に携わる教員と応答評価システムを用いて,児童生徒の感覚機能や興味・関心などの実態把握に活用し,その有用性について検討する。この研究目的を達成するため,以下の3つの主要研究課題を設定した。 [1]非接触型のワイヤレス心拍計に付属のサンプルソフトへの機能追加 [2]心拍データに基づく機械学習(ML)ツール開発 [3]重症児の教育実践におけるMLツールの有用性検討 令和3年度(初年度)は,外部委託したプログラム開発者と協議しながら,[1]非接触型のワイヤレス心拍計に付属のアプリケーションへの機能追加を実施した。心拍の計測は非接触型のmiRadar 8 Handy(サクラテック株式会社)を用い,付属のサンプルソフト(Python)のプログラム改変を行い,心拍データ計測のための環境を構築した。具体的には,[2]重症児の心拍データ計測に向けて,①測定中のイベント入力機能の追加,②イベント入力のグラフ上への出力,③イベント入力のCSVファイル出力機能の追加を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により,重症心身障害児を対象とした実験ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度(最終年度)は,研究実績の概要で記した[2]心拍データに基づく機械学習(ML)ツール開発に向けて,ワイヤレス心拍計を用いて重症児の心拍データ収集に取り掛かる。心拍はその加速・減速などの変動パターンを,感覚機能の受容(定位反応)や期待・能動的な注意(期待反応)に分類できるが,その加速・減速の変動には自律的変動と外的刺激に惹起された変動が混在している。そこで,収集した心拍データについて,申請者および専門家の複数の視点で心理状態に関連した心拍変動と無関連の心拍変動を同定し,その結果を教師データとして人工知能による判定アルゴリズムを構築する。機械学習のアルゴリズムは,外部委託したプログラム製作者と議論しながら選定し,複数の専門家と人工知能による応答評価との一致度90%を目指して,人から人工知能に置き換えを試みる。MLツール開発後,[3]重症児の教育実践におけるMLツールの有用性検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により,重症心身障害児を対象とした実験ができなかったため,旅費や謝礼が発生しなかった。次年度に実験を実施して,次年度使用額を使用する計画である。
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