本研究の目的は、生徒が探究に取り組むなかで,定義を構成,洗練していく活動である「数学的探究における定義活動」を促進するための教材を開発し,その有効性を検証することであった。この目的を達成するために,デザイン研究の方法論を採用したうえで,開発した教材を中学校の授業として実施し,得られたデータを質的に分析した。本研究の成果は、以下のとおりである。 第一に、理論的考察を通して「事柄の証明と論駁における定義活動」の意味を明らかにしたうえで、その活動を促進するための教材を開発し、公立中学校教諭の協力を得て授業を実践・分析したことである。授業データの分析を通して、開発した教材には期待する活動を促進するにあたって一定の効果が認められることが明らかとなった。以上について、得られた知見を論文の形にまとめて学会誌に投稿した。 第二に、理論的考察を通して「数学的概念の拡張における定義活動」の意味を明らかにしたうえで、その活動を促進するための教材を開発し、国立大学附属中学校教諭の協力を得て授業を実践・分析したことである。こちらについても、授業データの分析を通して、開発した教材には期待する活動を促進するにあたって一定の効果が認められることが明らかとなった。以上について、得られた知見を論文の形にまとめて学会誌に投稿した。 本研究における授業はいずれも1~2時間程度の短期的・単発的な実践であった。そのため、長期的・継続的な計画で教材開発と授業実践を行っていくことが、今後の課題として挙げられる。
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