研究課題/領域番号 |
21K20260
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
渡部 杏菜 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30910905)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / 音韻意識 / 聴覚活用 / 文字活用 / 読み書き習得 |
研究実績の概要 |
聴覚障害児には聴児同様に音イメージにより音韻意識を形成する者と文字イメージにより音韻意識を形成する者がいるが、両者を分ける背景要因は十分に検討されていない。本研究では聴覚障害児における音韻意識の形成の仕方とそれに関連する要因を明らかにし、そして音韻意識が日本語の読み書きの習得に与える影響を検討することを目的とする。 2021年度は聴覚障害幼児の音韻意識の習得状況と関連要因を分析することに取り組んだ。しかし、本研究は聴覚特別支援学校にて対象児に1対1で課題を行う必要があり、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点より、研究協力の同意を得ることが難しかった。2021年度については、聴覚特別支援学校1校の幼児2名(幼稚部3年)のデータしか得ることができなかった。その2名に対して、音韻意識課題(音韻分解課題、音韻抽出課題)および指文字単語の理解・表出課題、かな文字単語の理解・表出課題、数唱課題(順唱・逆唱)、視覚性ワーキングメモリ課題を実施した。また、保護者を対象にした質問紙により補聴機器の装用開始年齢、教育機関にかかった年齢、家庭でのコミュニケーション手段、聴力レベルのデータを収集した。2名は音声や口話を主としてコミュニケーションをしていたが、拗音節を2拍と認識する(例:「ちょこ」→「ち/ょ/こ」)という聴覚障害児特有の音韻分解の傾向を示した。普段のコミュニケーション手段が音声優位であっても、指文字や文字を早期から導入している聴覚特別支援学校の環境により、文字イメージによって音韻意識を形成していると考えられた。しかし、対象児が少なく、推測の域を出ていないため、今後も引き続きデータ収集をし、音韻意識の形成の仕方とその背景となる要因を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点より、研究の同意を得ることが難しく、十分な研究データ数を得ることができなかったことが研究を遅らせている。2022年度も引き続き感染状況を見ながら、データ収集をしていく必要がある。状況によっては、オンラインでの実施も検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
聴覚特別支援学校の幼児を対象に課題を実施し、聴覚障害児の音韻意識の習得状況と関連要因のデータ収集を引き続き行っていく。十分なデータ収集が見込めない場合には、研究対象を広げることやオンラインで課題を実施することも検討していく。 音韻意識の習得状況についてデータが得られた2名には、文の理解課題および作文課題を行い、音韻意識課題との関連性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大防止により、研究対象が在籍する学校での研究の同意を得ることができず、旅費として確保していた分をほとんど使用しなかった。データを十分に収集できていないため、データ分析の作業も遅れており、資料・文献収集費用や研究協力者への謝金もほとんど使用していない状況である。 次年度に、データ収集のための旅費、データ分析に係る資料・文献収集費用、謝金、成果発表のための学会参加費および旅費として使用する。
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