2023年度は最終年度として、次の2つの点について研究を行った。 (1)研究1年目に聴覚特別支援学校幼稚部年長児に音韻意識課題(音韻分解、音韻抽出)を実施し、対象児が小学部1年時(研究2年目)に作文課題(1枚の絵から物語を作る課題)を実施し、最終年度はそれらの課題の関連性を検討した。その結果、対象となった2名は音韻意識課題の成績は良好であり、作文課題では語句の表記や文法表現に誤りがほとんど見られなかった。しかし、文の内容については絵に描かれているものの羅列レベルに留まっていた。このことから音韻意識が習得され、語句の表記や文法表現につながったとしても、内容豊かな文を書くことは容易ではないことが推察された。なお、この研究の成果は日本特殊教育学会第61回大会で公表した。また、最終年度に対象児を増やして同様の課題を実施したため、その結果も含めて今後論文にまとめる予定である。 (2)昨年度に引き続き聴覚障害幼児の音韻意識の習得状況と関連要因を検討した。聴覚特別支援学校幼稚部在籍児14名(幼稚部2年~3年)に対して、音韻意識課題(音韻分解、音韻抽出)および指文字/キューサイン単語の理解・表出課題、かな文字単語の理解・表出課題、数唱課題(順唱・逆唱)、視覚性ワーキングメモリ課題を実施した。そのうち、キュードスピーチ併用下の聴覚障害児の音韻意識発達に影響を与える要因を分析した。その結果、音韻分解には音韻抽出、数唱順唱、キューサイン単語表出の成績が影響し、音韻抽出には音韻分解、視覚性ワーキングメモリの成績が影響すると考えられた。なお、この研究の成果は、第50回日本コミュニケーション障害学会学術講演会で公表するとともに、指文字併用下の聴覚障害児の結果を加えて、論文としてまとめる予定である。
|