研究課題/領域番号 |
21K20265
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
粕谷 圭佑 奈良教育大学, 学校教育講座, 准教授 (80908492)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 社会化 / 相互行為 / エスノメソドロジー / 幼稚園 / 社会学 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に基づき、〈研究A〉幼稚園入園時と小学校入学時の比較分析、〈研究B〉幼稚園卒園から小学校入学までの追跡調査、〈研究C〉教員の認識の比較分析に取り組んだ。 〈研究A〉では、入園間もない年少児と保育者の相互行為と、入学間もない小学1年生と担任教師の相互行為を収めた映像の比較分析にむけて、収集した映像データの整理および分析検討を進めた。特に集団活動時における園児・児童に対する保育者・教師の「注意」に着目し、それぞれの「注意」の相互行為上の構成が教示活動の達成に組み込まれていることが分析のポイントとして設定できた。 〈研究B〉では、調査対象幼稚園での参与観察を実施した。新型コロナウィルス感染拡大の影響のため綿密な追跡調査の実施は困難であることが判明したため、研究Bに関しては、追跡調査からスポット調査へと方法を転換し、「卒園式の練習」活動の分析へと焦点を変更する可能性がある。 〈研究C〉では、小学校教員、また幼稚園から小学校への異動を経験した教員へインタビュー調査を行った。とくに、調査対象の小学校教員との共同研究を開始することができ、小学校での「多忙化」状況にある労働環境の分析を含めながら、教員の児童に関する認識の一旦を明らかにすることができた。 以上の3つのテーマから、2021年度においては、学会発表、大学研究広報誌への研究成果公表、学術誌への論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づき、〈研究A〉幼稚園入園時と小学校入学時の比較分析、〈研究B〉幼稚園卒園から小学校入学までの追跡調査、〈研究C〉教員の認識の比較分析に取り組んだ。本年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響のため、研究Aおよび研究Cに中心に取り組むことになった。 〈研究A〉では、これまで収集した映像データを包括的に整理することが達成でき、今後の分析作業にむけた準備が整った。本年度は、そのうち幼稚園年少級の「列になる場面」「製作場面」における保育者の教示に着目した分析を行い、学術論文化を行った。現在2本の論文を執筆中であり、一本は日本社会学会機関誌『社会学評論』へ投稿済みであり、もう一本は日本教育社会学会機関誌『教育社会学研究』へ投稿予定である。 〈研究B〉では、調査対象幼稚園での参与観察を実施した。新型コロナウィルス感染拡大の影響のため綿密な追跡調査の実施は困難であることが判明したため、研究Bに関しては、追跡調査からスポット調査へと方法を転換し、「卒園式の練習」活動の分析へと焦点を変更する可能性がある。本年度は、これまで収集したデータの分析と組み合わせることも含めて、研究Bの目的達成を目指す計画を検討した。 〈研究C〉では、調査対象の小学校教員2名との共同研究を行い、小学校での「多忙化」状況にある労働環境の分析を含めた学会発表を行った。とくに教師の「多忙化」の言説的展開、および「部活動の外部委託化」を論点にした議論を整理したことで、教師の労働環境の変化が、小学校の教育活動に及ぼす影響について、論点を設定することができた。 以上から、2021年度の「研究の目的」をおおむね順調に進展させられたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題が設定する3つのテーマ、〈研究A〉幼稚園入園時と小学校入学時の比較分析、〈研究B〉幼稚園卒園から小学校入学までの追跡調査、〈研究C〉教員の認識の比較分析に基づいて研究を行う。 〈研究A〉では、幼稚園入園時と小学校入学時の比較分析を、教示活動における「注意」を分析ポイントとして行う。教育場面において教師からの「注意」はいたるところに見られるが、それが集団教示活動のなかで行われる際の特徴を記述し、さらに幼稚園で行われる注意と小学校で行われる注意との比較をおこなうことで、それぞれの学校組織へ参入することの相互行為的な意味合いを捉えることが狙いとなる。 〈研究B〉では、新型コロナウィルス感染拡大の影響のため綿密な追跡調査の実施は困難であることが判明したため、追跡調査からスポット調査へと方法を転換し、「卒園式の練習」活動の分析へと焦点を変更する。幼稚園における卒園式の練習は、それまでの幼稚園生活と今後の小学校生活との言及双方が行われる点で、両組織がつなぎ合わされる舞台の一つである。こうした場面の検討に向けて、2022年度では、調査対象園における卒園式の練習への参与観察を行うことを企画している。 〈研究C〉では、調査対象の小学校教員2名との共同研究をすすめると共に、幼稚園から小学校へ異動した教員へのインタビュー、および幼稚園教諭へのインタビューの蓄積を行う。2022年度研究課題終了時には、こうして得られたインタビューデータから、一定の分析知見を見出すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響のため、もともと予定していた学会発表の出張費および調査旅費を支出する機会が少なかった。そのため、次年度使用額が生じた。2022年度は、すでに学会発表出張費および調査旅費を支出する計画が生じており、次年度使用額を本来の目的通り支出できる見込みである。
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