研究実施計画に基づき、〈研究A〉幼稚園入園時と小学校入学時の比較分析、〈研究B〉幼稚園卒園から小学校入学までの追跡調査、〈研究C〉教員の認識の比較分析に取り組んだ。最終年度である2022年度においては、収集した映像データの整理および分析を進めつつ、2021年度の研究実績を展開させる形で、アウトプットを行った。主な研究成果は以下の二点である。 第一に、幼稚園、小学校双方において関連する、一斉教育場面における相互行為の分析を蓄積した。とくに、2021年度に検討をはじめた集団活動時における園児・児童に対する保育者・教師の「注意」について、幼稚園年少級での「読み聞かせ」場面に着目し、教示活動の進行性と中断と、「注意」行為の接合がいかになされるのかを分析した。また、典型的な一斉教育形式との比較のために、へき地およびオープンプラン教育の学校への参与観察を行い、両者の比較分析を行った。 第二に、小学校における教師の認識を捉えるにあたり、前年度から、現職教員に対して、教職の状況それ自体に対する教師の認識を捉える調査を行った。とくに「多忙化」状況にある小学校教員の労働環境のなかで、「子どもと向き合う時間」という、子どもの成長や学習に関連したキーワードが、いかに教師の語りのなかで特徴的に現れているのかを検討した。 以上の研究成果のアウトプットとして、2022年度においては、学会発表、商業誌の公刊、学術誌への論文投稿を行った。 本研究課題の目的に照らしたとき、研究機関全体を通じて、〈研究A〉〈研究C〉においては一定の成果を挙げることができた。〈研究B〉については、新型コロナウィルスの影響をうけたことで、観察調査は十分な形では実施できなかったが、調査の基礎作業となる文献調査および幼稚園教諭への聞き取りが実施できたので、今後観察調査へと展開させていく予定である。
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