研究課題/領域番号 |
21K20269
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
小林 亜紀子 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 助教 (10909245)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 評判 / 意思決定 / ゲーム理論 / 計算モデル |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; ASD)は,社会的コミュニケーションの障害と,限局的な興味や強いこだわりを特徴とする,「人との関わり」に困難を抱える発達障害である。 本研究では, 他者との円滑な関係を構築するために重要な,評判に基づく行動選択に着目する。他者からよい評判を得ることができれば,良好な関係を構築し,維持することが可能になる。しかしながらASD者は,自身の評判を上げるためにふるまいを変えるといった戦略を持たず,対人関係の困難さを抱えることが指摘されている。ASD者が自身の評判を上げ,維持するために,どのように行動を選択するのか,ゲーム理論と計算モデルを用い,その心理過程について詳細に検討する。 本年度は,新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み,オンラインでデータを収集するための実験環境構築と,健常者を対象とした予備実験を行った。予備実験では,クラウドソーシングサイト「ランサーズ」を通じて約150名被験者を募集し,web実験を実施し,実験パラダイムの改訂を重ねた。 本研究では,自分の評判を高めることにより,多くの報酬を獲得する行動選択の心理プロセスに着目し,健常者とASD者との違いを明らかにすることを目的としている。これまでに実施した予備実験の結果から,本研究のために新たに作成したパラダイムにより,健常者は,自身が獲得する報酬を大きくするために,自分の評判を高めようとする行動パターンをとることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大状況を鑑み,対面の心理実験によるデータ収集からweb実験でのデータ収集に切り替えるため,当初の予定よりも実験環境構築に時間がかかった。当初の予定より実験を始めるまでに時間がかかったが,web実験に切り替え,クラウドソーシングサイト等を用いて被験者を募集することによって,より効率的にデータを収集することが可能になり,少しずつ遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,健常者を対象とした予備実験の結果から,本研究で新たに作成した実験パラダイムによって,本研究の目的としている評判に基づく行動選択パターンを確認した。今後は,ASD者と健常者の行動選択パターンの違いについて検討するが,被験者の募集と診断等の確認は,福井大学の小坂浩隆教授が共同研究研究者としてご協力いただく予定である。本研究の実施については,すでに福井大学倫理委員会の承認を得ており,方針が定まり次第,データ収集を開始できる状態にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,対面の実験によるデータ収集を前提とした研究計画を立てていたが,昨今の新型コロナウイルス感染拡大状況を鑑み,web実験によるデータ収集をメインに研究を進めることとした。web実験を進めるための準備に時間を要し,実験を開始するまでに時間がかかったことや,必要物品に変更が生じたことから,使用額に差額が生じた。また,参加を予定していた学会等がオンラインでの実施になったり,学内の移動制限により,旅費の支出計画も変更となった。 データ収集をオンラインで実施するための環境構築を完了したため,今後はweb実験を主として進める。クラウドソーシングサイトや被験者募集代行業者等に依頼して被験者を募集するため,これらの利用手数料や,web実験実施時,一時的にデータを保存するためのデータベースの使用料,謝金の支払いに差額を使用することを予定している。
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