本研究課題の目的は、和辻哲郎とその学派が、戦後日本の道徳教育の思想・政策・実践におよぼした影響を明らかにすることである。本研究課題の遂行によって、以下のことがあきらかにされた。第一に、和辻哲郎の思想が、勝部真長らその影響下にある論者によって、特設道徳において具体化されていったことである。第二に、勝部が特設道徳を推進するにあたって、和辻の倫理学や徳の体系をめぐる思想を基盤としていたことである。第三に、和辻が論じた「まこと」という伝統的な思考が、戦後の道徳教育論においても展開されていたことである。以上のことは、戦後の道徳教育の展開を歴史的にたどるうえでの重要な手がかりとなるものである。
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