令和4年度は,令和3年度から引き続き,保育や幼児教育における「子ども理解」の扱い方の検討を深めた。さらに,保育者と保護者の「子ども理解」を検討することを目的として,①②の研究調査を実施した。 ①保育施設にて子どもたちの自由遊びを中心とした場面をビデオカメラで撮影した。協力園に確認をとりながら動画編集を行った後,調査用の動画とした。動画は4つの場面で構成されており,保育者の介入が比較的少ない場面を選定した。その理由は,本研究の調査対象には保護者も含んでいることから,保護者にとって馴染みがあり,子どもの姿に着目しやすい場面である必要があったためである。 ②保育者集団,保護者集団それぞれに映像視聴による討議を行った。本研究では,多声的ビジュアルエスノグラフィーの手法を援用している。①で作成した動画を刺激媒体として,動画に関する討議を行うことにより,保育者と保護者がそれぞれに子どもの姿をどのように見るかを分析した。SCAT(Steps for Coding and Theorization)による分析を行った。 保育者の子ども理解は,保育の専門知識を基盤にした理解であることが考えられた。この点はこれまでの先行研究においても指摘されてきた点であり,保育者の専門性としての子ども理解と位置付けられる。一方,保護者は,自らの子育て経験を基盤としての子ども理解であったため,我が子の姿と他児の姿を比較して捉えようとすることが考えられた。引き続き,保育者と保護者の子ども理解の具体的な相違点及び共通点を検討する。
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