令和5年度は,保育者と保護者の「子ども理解」に関する調査で得られた結果を質的に分析し考察した。本研究では,保育の場における幼児の遊び場面に対する解釈の語りを分析データとしている。調査方法は,多声的ビジュアルエスノグラフィーの手法をもとに,映像を刺激媒体とする討議の実施である。調査協力者は,現職の保育者(4グループ)と子どもを保育施設に通わせる保護者(4グループ)である。本調査で使用する映像は,研究代表者が協力園の遊び場面を撮影し,協力園に確認をとりながら動画編集を行ったものである。保育者の介入が比較的少なく,子ども同士で遊ぶ姿が中心の場面であるため,保育に馴染みのない保護者にとっても,子どもの遊ぶ姿に着目しやすいと考え,調査で用いる映像を選定した。 討議によって得られた語りは,SCATによる質的分析を行った。本研究では,SCATで生成された<テーマ・構成概念>をカテゴリーに分類し,保育者と保護者の遊び場面に対する解釈の傾向を考察した。保育者は当然ながら,自らの保育経験や保育に関する知識を背景として,遊びそのものの教材的な価値を判断し,子どもの発達や保育のねらいに沿うようなよりよい遊び実践の実現を目指した。保護者は,外面化する子どもの姿に着目し,子どもが楽しく遊んでいるかどうかが関心の中心となる傾向にあった。保護者にとって,保育者が意図する保育のねらいや遊びの意義は,見えづらく,わかりづらいと考察された。
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