研究課題/領域番号 |
21K20289
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
小林 亮太 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50911442)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 感情制御 / ネガティブ感情 / 不安 |
研究実績の概要 |
再評価とは,感情やイベントを異なる観点から捉え直したり,別の解釈をし直す感情制御方略である。この再評価については,これまでネガティブ感情の緩和や精神的健康の促進などに有効であることが多くの研究によって報告されてきた。しかしその一方で,再評価を含む感情制御方略のデメリットについてはあまり検討されてこなかった。この点に関して,ネガティブな感情は単に不快なだけでなく,その状況が当事者にとって重要であり,脅威が差し迫っていることを示すシグナルの機能を担っていると考えられる。そしてその結果として,脅威状況への準備や対策の動機づけを高めると考える立場もある。もしそうであれば,再評価によってネガティブ感情が低減してしまうことで,脅威状況への準備に対する動機づけが低下する可能性が推察される。本研究ではこうした再評価のデメリットについて検討を行うことを目的とする。準備に関わるネガティブ感情として不安などが想定されたため,まず大学生参加者を対象に不安を喚起・誘導する実験的手法について整理・検討を行った。今後はそうした手法を用いて,不安を実験的に喚起した後に再評価を求め,その結果として準備への動機づけが変化するか検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要にも記載したように,コロナ禍の影響もあり,研究は予定ほど順調には進んでいない。ただし,現時点までに研究1の再評価実験で行う感情喚起方法の検討や測定方法についての整理や準備は進めているため,実験に必要な機材や導入でき次第,研究1を進行させる予定である。また,結果として,研究1の遂行に充てるための時間が減ったため,研究2の準備を前倒しして行った。経験サンプリング調査の実施方法や注意点について文献調査を行った上で,試験的に経験サンプリング調査を実施した。ある程度は想定通り遂行できたものの,何点か改善が必要な点が発見されたため,研究2の遂行までに検証や修正を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策としては,まず生理指標の測定機器を導入する予定である。コロナ禍の影響で導入が半年以上遅延しているものの,今年度上旬までには設置される予定である。その後,不安喚起方略の有効性を主観指標,生理指標の両方の観点から評価をした上で,再評価のデメリットについての実験を実施していく。具体的には,大学生80名を対象とし,不安などのネガティブ感情を喚起した後に,条件に応じて参加者に再評価をする時間を設ける。最後に,参加者の準備の程度や動機づけを主観指標や行動指標から評価する。もし,再評価にデメリットがあるならば,準備の程度は再評価をした条件において,しなかった条件より低いと予測される。また,それらと並行して,経験サンプリング調査の準備を進める予定である。経験サンプリングについては方法論のチェックや予備調査を昨年度中に実施している。その際に項目選定や回答頻度について問題点が浮上したため,その点について解決していく。実験室実験の結果と合わせることで,再評価のデメリットが実験室場面に限定された現象ではないことを示そうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用するための生理測定機器を発注したものの,コロナ禍のため手続きが遅れ,4月現在で購入できていないため。次年度には生理測定機器が購入できるため,次年度使用額はその購入に使用する。
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