研究課題/領域番号 |
21K20291
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白野 陽子 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (20834154)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 社会的相互作用 / fNIRS / 自閉スペクトラム症 / 随伴性 / 社会認知 / 発達障害 / 脳機能 / 乳幼児 |
研究実績の概要 |
本研究は、自然状況下の対人相互作用において、社会的随伴性への発達障害ハイリスクとローリスク乳児の脳反応を比較検討し、社会的相互作用にかかわる神経基盤の定型・非定型発達過程を明らかにすることを目的とする。そのため、発達障害のリスクを持つ乳児と定型発達乳児を対象として、実際の対人相互作用における社会的および非社会的随伴性への脳反応の検討を行なっている。本年度は、2022年8月から2023年3月まで産休・育休を取得したため、その間は研究を進めることが出来なかった。2022年7月までは、前年度に引き続き脳機能および行動データの収集を行い、約15名の参加児のデータを集めることができた。本研究はこれまで行ってきた脳機能研究を発展させたものであるため、以前に得られたデータと合わせて解析を行なった。その結果、定型発達乳児において、社会的および非社会的随伴性に共通して右の側頭頭頂接合部(TPJ)領域の活動が増加した。しかし、社会的随伴性への脳反応については、母親の社会的応答性にかかわる行動データとの間に正の相関が認められたのに対し、非社会的随伴性への脳反応との間には有意な相関が認められなかった。この結果は、社会的随伴性と非社会的随伴性に対する脳反応が、質的に異なる処理を反映している可能性を示唆している。この成果について、国際学会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年4月から7月にかけて、約15名の参加児のデータを集めることができたものの、2022年8月から2023年3月まで産休・育休を取得したため、その間は研究を進めることが出来なかった。また、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、ハイリスク乳児の新規募集が予想以上に難航し、目標とする人数のデータ収集を行うことができなかった。一方、ローリスク乳児のデータは当初の予定通りに収集できており、データ解析も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、データ収集が予定よりも遅れている発達障害ハイリスク乳児のリクルートおよび実験の実施を進め、脳機能データおよび行動データの収集を行う。ハイリスク児とローリスク児の各グループで約20名ずつの有効データを取得した上で最終的な解析を行い、ハイリスク児とローリスク児の随伴性に対する脳活動の比較検討を行う。また、養育者との自由遊び場面における参加児の社会的行動について行動コーディングを実施し、社会的相互作用中の脳活動との関連を検討する。さらに、脳活動だけでなく、脳機能結合についての解析も同時に行い、社会的相互作用を支える脳機能ネットワークの発達について、先行研究の知見を踏まえつつ考察する。本研究成果について、国内学会や国際学会にて発表し、意見収集を行った上で論文執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年8月から2023年3月まで産休・育休を取得したため、その間は研究を進めることが出来ず、経費を必要としなかった。また、当初の予定よりもデータ収集が遅れた関係で、実験補助者およびデータ解析補助者の雇用が一部取り止めとなった。 次年度は、データ解析のためのパソコン、ソフトウェア、データ保存用のハードディスク等の物品を購入する予定である。また、次年度オンサイトで開催予定の学会への参加を予定しており、そのための旅費を必要とする。さらに、実験参加児への謝金、実験補助者とデータ解析補助者への謝金に加え、論文の英文校閲費および学会誌投稿料、データ解析および論文執筆の際に必要となる発達心理学、認知 神経科学、統計解析手法についての参考図書の購入費として使用する予定である。
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