自傷行為は後の自殺既遂を予測する重要なリスク要因であることが示されている一方で,自傷行為の症状経過に応じて自殺リスクがどのように変化するのかについてはほとんど明らかにされていなかった。本研究は,自傷行為者が有する自殺リスクと関連することが示されている自傷行為の維持メカニズムの観点から経時的変化について検討し,維持要因の拡大に伴う自殺リスクの増加は症状経過や長期化に伴い一元的に生じるものではないことを示した。したがって,自傷行為者の自殺リスクアセスメントにおいては,自傷行為の持続期間の長短に関わらず,自傷行為に関するエピソードの変化について定点的な査定を実施することが重要であると考えられる。
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