研究課題/領域番号 |
21K20307
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
長峯 聖人 東海学園大学, 心理学部, 助教 (10909526)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 時間的距離化 / 学業ストレス / 失敗への信念 / 学習動機づけ |
研究実績の概要 |
今年度は,2つの調査研究(web調査)を実施した。具体的な内容は以下の通りである。 まず研究1では,高校生の学習における時間的距離化の効果について,基礎的な関連性を検討した。具体的には,時間的距離化と,学業場面における失敗への信念および学業ストレス(学習不安,テスト不安)との関連について検討した。その結果,時間的距離化は学習場面における失敗へのポジティブな信念(活用可能性の認知)と正の相関を示し,学習場面における失敗へのネガティブな信念(脅威性の認知)と負の相関を示した。さらに,時間的距離化は学習不安およびテスト不安についても時間的距離化と負の相関を示した。加えて,媒介分析を行った結果,時間的距離化は学業場面における失敗へのポジティブな信念の高さおよびネガティブな信念の低さを媒介して,学業ストレス(学習不安,テスト不安)を負に予測することが明らかになった。 次に研究2では,同じく高校生を対象として検討を行った。具体的には,研究1とは異なるサンプルで研究1の結果が支持されるか検討すると共に,時間的距離化と学習動機づけとの関連の検討,および時間的距離化が学業場面における失敗への信念を介して学業ストレスおよび学習動機づけを予測するモデルにおいて,制御焦点が調整要因となり得るかどうかの検討を行った。その結果,まず学業ストレスについては研究1と同様の結果が得られた。さらに,時間的距離化は学習動機づけのうち,内発的動機づけおよび同一化的動機づけと正の関連を示した。加えて,研究1と同様に媒介分析を行った結果,時間的距離化は学業場面における失敗への信念を媒介して,学習動機づけ(内発的,同一化的)を予測することが明らかになった。しかし,時間的距離化と学業ストレスおよび学習動機づけとの関連において,制御焦点の調整効果はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年度に計画していた1つの研究(研究1)に加え,研究2(研究1の追試+計画時における研究2の一部)を追加で遂行することができた。研究1では,時間的距離化が学業ストレス(学習不安,テスト不安)の低さや,学業場面における失敗への信念(ポジティブな信念の高さ,ネガティブな信念の低さ)と関連することが明らかにされた。研究2では,研究1の結果が頑健であることが明らかになったことに加え,時間的距離化が学習動機づけ(特に自律的な動機づけ)と関連することも示された。 これらの研究のうち研究1は事前に計画したものであり,研究2は研究1の結果を踏まえて追加したものであった。また,研究2は計画時点における研究2の一部の内容を含むものであった。これらの2つの研究については,計画時の仮説をおおむね支持する結果が得られた。そのため,本年度の研究は順調に進んだものと考えられ,課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
採択2年目は,申請書の内容から少し変更したうえで研究を遂行する予定である。 まず,今年度の研究1および研究2を踏まえ,研究3を追加で遂行する。具体的には,未来への動機づけを取り上げ,学業ストレスや学習動機づけと同様に,時間的距離化が学習場面における未来への動機づけと関連するかをweb調査により検討する。 また,研究4として,時間的距離化が学業場面における失敗への信念,学業ストレス,学習動機づけ,未来への動機づけへ長期的に影響するかを,短期縦断研究によって検討する。期間は6~9ヶ月ほどを予定している(申請書時点での研究2に相当)。 最後に研究5として,時間的距離化が学業場面における失敗への信念,学業ストレス,学習動機づけに影響するかどうかについて,実験的に検討する(申請書時点での研究3に相当)。この点については,新型コロナウイルス感染状況による実現可能性を踏まえ,対面ではなくオンライン実験によって行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について予算よりも実際の額が小さかったため,少額ながら余分が発生してしまいました。翌年度分としては請求しておりません。
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