研究課題/領域番号 |
21K20310
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研究機関 | 環太平洋大学 |
研究代表者 |
中井 和弥 環太平洋大学, 次世代教育学部, 講師 (10908651)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / ACE / アタッチメント / J-SAAM |
研究実績の概要 |
小児期逆境経験者は,さまざまな精神・身体疾患に罹患しやすいだけでなく,不安定な愛着も有しやすいことが知られている。そのため本研究課題では,小児期逆境経験者の不安定愛着に介入する手法(Security Priming)およびその効果測定尺度の開発を目的としている。なお,本研究課題では,効果測定尺度として,アタッチメント安定性・不安定性の一時的変動を捉えるState Adult Attachment Measure(SAAM)を用いることを予定しているが,当該尺度の日本語版はこれまで存在していなかった。そこで2021年度は,SAAMの開発者であるOmri Gillath博士との協議のもと,SAAM日本語版(J-SAAM)を開発した。具体的なプロセスとしては,まず翻訳会社に依頼を行って,SAAMの原版を日本語翻訳した。日本語翻訳されたSAAMを研究代表者が適宜修正した後に,Omri Gillath博士に確認をしてもらった。Omri Gillath博士より指摘を受けたところを修正し,再確認を依頼するという手続きを繰り返すことで,最終的にJ-SAAMの項目文を確定させることができた。 J-SAAMの項目文の確定後は,当該尺度の性能評価を行うために,400名程度を対象としたWeb調査を実施した。その調査によって,当該尺度が原版と一致する3因子構造(安定性・不安・回避)を有すること,十分な信頼性と妥当性を有することが確認できている。また,それらの結果については,2022年度の日本心身医学会と日本心理学会の学術大会で公表することが決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中核は,小児期逆境経験者に有効なSecurity Primingの手続きおよびJ-SAAMの開発である。2021年度に予定していた後者の開発に関しては,項目作成が完了し,当該尺度の性能評価も進められている。すでに,当該尺度が因子構造・内的整合性・再検査信頼性・収束的妥当性・弁別的妥当性・増分妥当性などにおいて原版と遜色ない性能を有していることが確認できている。さらに,追加の性能評価の研究も遂行中である。以上を踏まえ,概ね順調に進行していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)J-SAAMがアタッチメント安定性・不安定性の一時的変化を測定することができることを確認するための実験を実施する。つまり,アタッチメント安定性・不安定性を即時的に変化させる介入手法(Security Priming)の前後で,J-SAAMによる調査を実施し,当該尺度得点の変化を検証する。 (2)小児期逆境経験者を対象に,Security Primingの有効性を検証する。具体的には,スクリーニング調査によって,小児期逆境経験を有することが確認された人々を対象にSecurity Primingを実施し,介入の前後で測定したJ-SAAMの得点の変化を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外のソフトウェアが安く購入できたなど,当初の想定以上に物品費の経費削減が可能であったことから,次年度使用額が生じた。
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