研究実績の概要 |
Autism Spectrum Disorder(ASD)は、社会的コミュニケーションの障害や、限定された反復的な行動様式を特徴とする。ASDと診断された子どものおよそ8割が睡眠問題を抱えている(Cortesi et al., 2010)。ASD児の夜間の睡眠問題は日中の問題行動を増悪すること(Fadini et al., 2015)や、ASD症状の程度に関わらず、睡眠問題がASD児の日中の問題行動と強く関連することが示唆されている(Lindor et al., 2019)。また、子どもの睡眠問題は養育者の抑うつを招き(Ystrom et al., 2017)、抑うつ傾向のある養育者は育児困難感を感じやすくなることから(Yoshioka-Maeda & Kuroda, 2017)、ASD児に見られる睡眠問題は、その養育者のメンタルヘルスにとっても重要な問題である。このような背景からASD児の睡眠の問題に対する心理社会的ケアが開発されているものの、わが国ではその有効性はもちろん、プログラム開発もされていない。また、ウィズコロナ禍の現在、遠隔で提供できるプログラムが望まれているものの、国際的に遠隔での提供形態を考慮したプログラムはない。 このような背景から、本研究では、ASD症状を呈する児童の睡眠問題に対する遠隔での心理社会的ケアの開発を目的とする。この目的の達成のために、既存のASDの睡眠の問題に対する心理社会的ケアに関する系統的レビューを実施し、ASDの睡眠の問題に有効な介入の構成要素の抽出をする。その後、抽出された介入の構成要素に基づき、遠隔支援に最適化したASDに対する心理社会的ケアの開発を行う。
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