研究課題/領域番号 |
21K20313
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
則武 良英 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 助教 (30908786)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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キーワード | 感情制御 / 認知的感情制御 / 注意欠陥多動性障害児 |
研究実績の概要 |
注意欠陥多動性障害児(以下ADHD児)の感情制御不全の研究では,その背景にある感情制御の「方略の使用不全」が検討されていない。そこで,研究1では,感 情制御方略の使用特性を測定する尺度を作成することを目的とする。研究2では,ADHD傾向児の感情制御方略の個人差及びその個人差の規定要因を明らかにする ことを目的とする。本研究は,国内で使用可能な感情制御方略の質問紙の作成と,ADHD傾向児の感情制御不全の実態及びその背景要因の解明の一助となることが 期待される。 研究1では,日本語版子ども用認知的感情制御質問紙(CERQ-Jk)を作成した。まず,CERQ-Jkの妥当性の国際比較を行うためには,小児抑うつ尺度第2版(CDI 2)を使用する必要があったが,国内では信頼性・妥当性が未検証であった。そこで,CDI 2短縮版の信頼性・妥当性を検証するための児童・生徒を対象とした質 問紙調査を行なった(研究1-1)。その結果,英語版と同様の信頼性と妥当性が示された。そして,CERQ-Jkの信頼性・妥当性を検証するために児童を対象とした 質問紙調査を行なった(研究1-2)。その結果,英語版と同様の9因子構造と,安定した信頼性(内的整合性)と妥当性が示された。その後,CERQ-Jkの再検査信 頼性を調べるために,研究1-2の参加者の一部に対して5ヶ月の時間間隔をあけて追加調査を実施した。その結果,2時点間のCERQ-Jkの下位因子得点間に一定の級 内相関の値が示された。 研究2では,ADHD傾向の高い児童と低い児童を比較することで,ADHD傾向児の認知的感情制御方略の使用の個人差の特定,その個人差の説明する要因の特定の2点 を目的として,児童を対象とした質問紙調査を行った。本調査は,研究1-3に包含する形で実施され,現在結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では,研究1の実施を完了した。具体的には,研究1-2の分析結果を精査するとともに,研究1-3を実施してCERQ-Jkの再検査信頼性を確認することができた。CERQ-Jkに高い信頼性と妥当性が確認されたことから,国内の児童のアセスメントにおいても有用な質問し尺度が作成された。また,研究1-1と研究1-2の成果を国内学会で発表することで,議論を重ねた。また,研究2の実施も完了し,現在は解析を進めている。以上をもって,当初の計画と比較して研究機関を延長していることで,概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究1-3の結果を国内学会で発表することで,さらに議論を深める。また,研究1-1の成果の論文化及び研究1-2と研究1-3の成果の論文化を現在進めている。この2つの論文の発表は,国内外の心理学の学術的発展に寄与するとともに,質問紙尺度が国内のアセスメントで利用されることを促進すると考える。研究2の結果は現在解析中であり,次年度にさらに結果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の解析作業に時間を要したことから,今年度内に研究成果の論文化まで至らなかった。このことから,次年度は研究成果の論文化に伴う校正等の経費としての支出を予定している。あわせて,研究成果の学会発表も行うため,学会参加に関する経費としても支出を予定している。
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