研究課題/領域番号 |
21K20320
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高田 土満 新潟大学, 人文社会科学系, 講師 (50911583)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ヒルベルト多様体のC^*環 / KK理論 / ウィッテン種数 / ループ空間 / 位相的K理論 / サイバーグウィッテン理論 |
研究実績の概要 |
当該年度1月に,加藤毅教授(京都大学)との共同研究で,自由な有限群作用がある場合のゲージ理論の論文をプレプリントとして発表し,現在プロシーディングスに投稿中である.この研究は,もともと「コンパクト多様体から得られた無限次元空間の間の非線形写像の写像度を定義することで,もとの空間の不変量を得る」という研究を,非コンパクト多様体に一般化することを目的としたもので,本研究には無限次元多様体の関数環に対する知見を深めるという点で関係を持つものであった.結局,その扱いは非常に難しい一方で,有限群ならばそれほど苦労せずに新しい結果が得られることに気づいたため,その状態で論文として発表することにした.研究の過程において,無限次元多様体の関数環に対する知見を深めることが出来たという意味で,間接的な形ではあるが,研究を進めることが出来た. 研究計画書では,本研究の目的の結果を証明してから論文を発表する予定であったが,その予定を変更して,現時点での結果(ループ空間の非可換幾何的指数の構成)を論文として発表することにした.論文を執筆する過程で,本研究が始まった頃は気づいていなかった問題点に気づき,それらを解決することが出来た.その過程を通して,無限次元多様体の関数環に対する知見が深まった.具体的には,Yuが定義した無限次元多様体の関数環では,もとの空間の微分幾何的な情報が極めて本質的であるということが,改めて実感できた.これは,YuのC^*環が捕まえられる無限次元多様体の情報に関するヒントを与えているように思われ,その情報を予想するのは現時点では難しいが,今後時間を掛けて研究していくテーマに結びついているように思われる. 数年前に投稿した論文が,当該年度中にアクセプト(未出版)された.本研究と深く関わる論文であるため,その論文が評価を受けるのは喜ばしいことである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慣れない教育業務に悪戦苦闘しながらも,共同研究での論文を一本仕上げ,投稿中であった論文を掲載まで持っていき,新たな論文に取り掛かることが出来た.本研究のメインとなる問題に関する劇的な進展は無かったが,そのための糧となる知見を得ることが出来た.また,論文を書いているうちに,アイディアを出した段階では気づかなかった解いてしまう細々とした問題をいくつか解いた.このような結果の解決の積み重ねが,今後の研究の原動力となっていくと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
まずは現在執筆中の論文を完成させる.その後は,研究を真正面から進めるならばループ空間のC^*環のKホモロジー群の元の構成やKホモロジー群の計算を行うべきであるが,急がば回れで,むしろ位相的K理論側の研究を進めたり,ヒルベルト多様体のC^*環の一般的な作用素環的性質(あるいは作用素環的性質と幾何学的性質との関係)を調べる方が,結果的に早く研究が進むように思われる. 位相的K理論側の研究課題としては,Wittenの原論文にある通り,S^1作用をもつ多様体のループ空間を調べることが挙げられる.位相的K理論は代数トポロジー的な対象であるため,計算能力が高く,Witten剛性が代数トポロジー的に証明できれば良い結果となるだろう. ヒルベルト多様体のC^*環の一般的な性質については,その関手性に関心がある.ヒルベルト多様体のC^*環はBott周期性を基本に定義されているため,普通の関数の引き戻しよりも,むしろGysin準同型のようなものの方が基本的なのかもしれない.実際に,Thom同型に対応するものは,現在執筆中の論文でも用いた.もしそうならば,有限次元多様体で「Gysin準同型を基礎とする枠組み」を再構成したうえで,そちらを無限次元化することを考えるのが良さそうである.この予想が正しいか否かはともかく,要するに,素朴に考える「幾何学の理論」をそのまま無限次元化するのは正しくなさそうだという感覚があるということである. このように,現時点でははっきりとした方策があるわけではないものの,ぼんやりとした方向性は,論文を執筆する過程で見えてきた.本年度も,「そもそもどんな理論が無限次元化できるのか」ということからきちんと考察することで,研究を進めていくつもりである.
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次年度使用額が生じた理由 |
残額77円で購入できるものが無かったため,残額が生じた.この残額は,次年度の物品費に当てる.
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