最終年度には,本研究の要であるランダム緩和ニュートン法の実装を行ないました.アルゴリズムとしてはまだ改良の余地があるものの,具体的な計算を実行することで以下のことがわかりました.ニュートン法に十分大きいノイズをかけると求根アルゴリズムがうまく機能することは知られていましたが,ある例についてはとても小さいノイズでもランダムアルゴリズムが充分うまく機能しました.これは,既存の理論よりも良いアルゴリズムを今後開発できる可能性があることを示唆しています.また,必要なノイズのサイズは,決定論的な緩和ニュートン法写像を一つの族と見たとき,その族の分岐が起こるパラメータと深く関係しているという予想が得られました.これを数学的に証明できれば,より良いアルゴリズムの開発につながります. 上記の結果及び予想について,ランダム力学系の研究集会において口頭発表しました.それを通して,今後追求するべき研究内容を多様な視点から議論することができました.特に,決定論的な力学系の分岐とランダム力学系の分岐を関連付けることが今後の主要な課題です. 研究期間全体を通じて,課題にしていた「ランダムニュートン法」を「乗法的ノイズのランダム力学系」と捉える,より一般的な視座から研究すべきであるという考えに至りました.決定論的な力学系の分岐とランダム力学系の確率分岐を関係づけるために,統一的な議論が必要だからです.前年度に考えた乗法的なランダムロジスティック力学系やランダム緩和ニュートン法を,具体的なパラメータで計算しつつ,統一的に議論することが今後の発展につながると信じています.
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