研究課題/領域番号 |
21K20327
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
和田 康載 神戸大学, 理学研究科, 助教 (30836698)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | リンコイド / ミルナー不変量 / 仮想結び目 / 多重化 |
研究実績の概要 |
結び目図式の観点から結び目を一般化した、ノットイドの概念が2012年にV. Turaevにより定義された。ノットイドの概念をもとに、絡み目の一般化にあたるリンコイドの概念が以下のように自然に定義される。(m, n)型リンコイド図式とは、2次元ユークリッド空間にはめ込まれたm個の円周およびn個の単位区間で、多重点が横断的な2重点のみであるものをいう(mとnは非負整数)。ただし、各2重点には上下の情報が与えられているとする。ライデマイスター移動と呼ばれる3種類の局所変形で生成される同値関係による(m, n)型リンコイド図式の同値類を、(m, n)型リンコイドという。とくに、(m, 0)型リンコイドがm成分絡み目である。 2021年度は研究計画に従い、絡み目のミルナー不変量を(0, n)型リンコイドの不変量に拡張することに取り組み、次の成果が得られた。(0, n)型リンコイド図式に対してミルナー数と呼ばれる整数を定義し、そのミルナー数がライデマイスター移動で不変であることを示した。これにより、当初の研究計画通りに、絡み目のミルナー不変量を(0, n)型リンコイドの不変量に拡張することができた。 2021年度はさらに仮想結び目の研究について成果が得られた。ここで、仮想結び目(または絡み目)とは、リンコイドとは異なる、結び目(または絡み目)の一般化にあたる概念である。具体的な研究成果は以下の通りである。 与えられた仮想結び目と2以上の整数から、仮想絡み目を構成する多重化という操作を定義した。仮想結び目を多重化して得られる仮想絡み目の不変量は、もとの仮想結び目の不変量になる。その事実に着目して、両者の不変量の間の関係について調べた。そして、多重化から得られる仮想絡み目に対するいくつかの不変量(例えば、絡み数や各成分の結び目型)は、もとの仮想結び目の不変量を用いて記述できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、当初の研究計画通りに研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、絡み目のミルナー不変量を、1以上の整数mに対する(m, n)型リンコイドの不変量に拡張することに取り組む。 まず、(1, n)型リンコイドへミルナー不変量を定義することに取り組む。Dを(1, n)型リンコイド図式とし、Cをその図式における円周のはめ込みの像とする。C 上に1点pを選ぶ。その点pでCを切り開くことにより、Dから(0, n+1)型リンコイド図式D(p)が得られる。そこで、Dのミルナー数を、2021年度の研究で与えられた(0, n+1)型リンコイド図式D(p)のミルナー数で定義し、そのwell-defined性を調べることを計画している。この定義では、2021年度の研究から、Dのミルナー数はライデマイスター移動で不変であることが分かる。一方、そのミルナー数は点pの選び方に依存するため、点pを別の点qに取り替えた場合のミルナー数の変化を観察する必要がある。この観察を行い、点pを点qに取り替えた場合のミルナー数の変化を明らかにし、Dのミルナー数のwell-defined性を証明したい。 2以上の整数mに対する(m, n)型リンコイドに対しても、上記と同様の方法で、ミルナー不変量を定義することに取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地参加を予定していた対面開催の研究集会および学会が、当初の想定を超える急激な新型コロナウイルスの感染拡大の社会情勢を受けて、主催者によりオンライン開催に変更された。そのため、予定していた国内出張を取りやめざるを得なかった。取りやめた出張で使用する予定であった旅費の分、次年度使用額が生じた。 次年度使用額分は主に出張旅費として使用し、研究成果発表および情報収集のために国内外の研究集会や学会に参加することを計画している。
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