研究実績の概要 |
本研究では、へガード理論の観点を用いて3次元多様体と絡み目の様々な性質やその関係を明確にさせることを目的に研究を進めた。 具体的な目標の一つは、3次元多様体のへガード分解と絡み目の橋分解の「Hempel距離」と多様体および絡み目の幾何的性質や対称性等がどう関係しているかを明らかにすることであった。これに関して、小林毅氏、井戸絢子氏と共同研究を行い、keenおよびstrongly keenな橋分解が多く存在すること、一方、Hempel距離が1である(0,3)-分解は存在しないことを示すことができた。また、斎藤敏夫氏の結果を用いれば、Hempel距離が1の(1,1)-分解は常にstrongly keenであることが従うことも分かった。本年度はこれらの結果をまとめた論文を執筆し、ほぼ完成させることができた。 また、橋分解に当たる概念がこれまでいくつか異なる形で形式化され、それらが同様な概念として扱われてきたように伺えるが、その違いについて明確にさせることも、本研究の目標の一つであった。これに関しては、小林毅氏、小沢誠氏、高尾和人氏と共同研究を行い、橋分解の同相類と橋位置のイソトピー類の間には一対一対応の関係があること、一方で、橋分解の同相類と橋分解のイソトピー類の間には本質的な違いがあることを示した。更に、これまで橋分解に関して知られている結果を、この違いに注意しながらまとめ直して、論文を執筆している。
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