研究実績の概要 |
本研究課題では, 大規模相互作用系と呼ばれる自由度の大きい微視的系から時空スケール極限により巨視的振る舞いを導出することを目的とする. 特に, ランダムな初期配置の箱玉系(ランダム箱玉系)や, 確率的摂動が加えられた調和振動子鎖(確率調和振動子鎖)など, 具体的かつ重要な一次元大規模相互作用系を扱ってきた. 最終年度は, コロナ禍によって延期されていたフランスへの研究滞在を行い, 関連分野の研究者らと議論を行った. 彼らとの議論を通して, 上記した二つの数理モデルに関して, 以下の成果を得た. 箱玉系について, 前年度までの研究によって得られた新しい線形化手法である「席番号配置」と, 既存の線形化手法である「10-elimination」の対応を, {0,1}^{Z} 上で定義された「両無限」箱玉系において与えた. この結果に関するプレプリントは arXiv にアップロードされている. これにより, 両無限箱玉系に関する長時間挙動のより詳細な解析が可能になり, 得られた部分的な成果については学会発表を行なっている. 確率調和振動子鎖について, パラメータを含む新しいタイプの境界条件を持つ場合を考察し, パラメータに応じて, 全く異なる巨視的振る舞いが得られることを証明した. この結果に関しては, より一般的な状況において考察したのちに, 論文としてまとめる予定である. 期間全体を通じての主要な成果は, 「席番号配置」の開発である. この手法によって, 特にランダム箱玉系の解析が今後より進展していくことを期待している.
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