研究課題/領域番号 |
21K20333
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
川本 敦史 拓殖大学, 工学部, 准教授 (10910052)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 逆問題 / 数理モデル / 異常拡散現象 / 非整数階拡散方程式 / 均質化法 |
研究実績の概要 |
2021年度は,異常拡散現象を記述する時間非整数階拡散方程式に対して均質化法の研究を行った. まず,均質化法に関する専門書を調査し,古典的な意味での拡散現象を記述する通常の拡散方程式に対して均質化法についての知見を得た.一方,時間非整数階拡散方程式の順問題の適切性に関する先行研究の調査を行った.そして,通常の拡散方程式に対する均質化法の結果と時間非整数階拡散方程式に対する順問題の結果を組み合わせることで,ミクロ構造における時間非整数階拡散方程式からマクロ構造における時間非整数階拡散方程式を均質化法によって新たに導出することができた. 土壌などの複合的な媒体における物理現象は,その不均質性を記述するミクロ構造と大域的挙動を記述するマクロ構造によって特徴づけられる.均質化法とは,この複合媒体におけるミクロ構造からマクロ構造を得る数学的手法である.したがって,今回得られた均質化法の結果は,不均質な複合媒体における拡散現象(異常拡散現象)の大域的挙動の解析に応用可能である.さらに,数学的なひとつの結果にとどまらず,工学的に得られた観測データに数学解析の結果を実際に応用する上でも非常に重要である. 次に,得られた均質化法の結果から,時間非整数階拡散方程式のマクロ構造における拡散係数とミクロ構造における拡散係数の関係を研究した.特別な仮定を課した場合ではあるが,この2つの拡散係数の関係式を直接的に記述することができた. 本研究では,時間非整数階拡散方程式に対して,均質化法と逆問題の数学解析を組み合わせた新たな逆問題を創出し,その問題の解決を目指している.2021年度は,その第一歩として,均質化法の研究成果が得られた.また,2021年度末より,時間非整数階拡散方程式に対する逆問題の数学解析について先行研究の調査・研究を新たに開始しており,2022年度も継続して研究を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,研究の準備のため,本研究課題に関わる先行研究の調査から着手した.具体的には,本研究に必要となる時間非整数階拡散方程式に対する順問題とその周辺の結果について調査した.均質化法については,初めて取り組む研究内容であるため,専門書を精読するなどして,新たな知見を得た. 時間非整数階拡散方程式に対する均質化法の研究を行い,一定の成果を得ることができた.具体的には,均質化法により,ミクロ構造における時間非整数階拡散方程式からマクロ構造における時間非整数階拡散方程式の導出に成功した.さらに,均質化法で得られた結果から,時間非整数階拡散方程式のマクロ構造における拡散係数とミクロ構造における拡散係数の関係も研究し,特別な仮定を課した場合に,その2つの拡散係数の関係式を導出することができた. 2021年度末より,時間非整数階拡散方程式に対する逆問題の数学解析について先行研究の調査・研究を開始している. 以上から,当初の研究実施計画に沿って,本研究はおおむね順調に進展しているものと考える. 2022年度は,逆問題の数学解析について研究を行い,均質化法と逆問題の数学解析の結果をひとつにまとめ,学術論文や研究発表などの研究成果の発信へとつなげていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って研究を遂行する予定である. 2022年度は,時間非整数階拡散方程式に対する逆問題の数学解析を行う.均質化法の結果と逆問題の数学解析の結果を組み合わせ,ミクロスケールとマクロスケールを考慮した逆問題を新たに研究する.そして,その逆問題における一意性・安定性の研究を行う. 研究成果の発信として,本研究課題で行った研究内容をもとに学術論文を作成する.そして,研究集会や学会などで本研究の成果について研究発表を行いたいと考えている. 研究が順調に進んだ際には,本研究の周辺の話題にも積極的に取り組む.たとえば,時間非整数階波動方程式など他の偏微分方程式に対しても,均質化法とその逆問題への応用の研究を行う. 研究遂行に困難が生じた際には,他の研究者との議論などを通して課題の解決を図りたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,2021年度は研究集会や研究打ち合わせの出張などを行えなかった.そのため,次年度使用額が生じている. 2022年度は,情勢を鑑みて,出張などの旅費に加え,研究に直接必要となる図書などの資料,その他の研究環境の整備に必要なPC周辺機器や消耗品のために助成金を用いたいと考えている.
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