研究課題/領域番号 |
21K20339
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
奥村 克彦 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (30906665)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ポアソン構造 / ファノ多様体 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまで退化因子の特異点が単純正規交差(SNC)因子である対数的ポアソン構造(SNC対数的シンプレクティック構造)をピカール数が2以上のファノ多様体上で構成・分類するという問題に取り組んでいた.これまでに知られたSNC対数的シンプレクティック構造は射影空間上の対角ポアソン構造のみだったからである.2022年1月に「対称性と幾何」セミナーにて,この以前の研究について講演するとともに,現在の当該分野の状況や課題について紹介した. 本研究計画では,退化因子に許容する特異点の範囲を単純正規交差因子のみの場合より拡張すること,それによりこれまで対数的シンプレクティック構造が構成されたことのないファノ多様体上に新しく例を構成すること,特に,そのような対数的シンプレクティック構造の存在性によりその多様体を特徴づけることが目的だった.研究開始時の研究の概要に書いてあるように,元々の狙いは多様体が二次超曲面の場合を想定していた. 2021年度は,研究の方針を転換して,V-normal crossing特異点を退化因子に許容する対数的シンプレクティック構造の研究に着手した.V-normal crossingとはエタール被覆上ではSNCであるような特異点である.そのような特異点を扱うために,滑らかなDeligne-Mumford stack上でのポアソン構造や交点数の理論などについて理解を深めた.現在の転換した研究計画において重み付き射影空間が,従来の計画の二次超曲面に相当する多様体になると想定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来の研究方針から転換したため.しかし,現在の方針ではすでに退化因子に許容する特異点が定まっている.2022年度はより具体的に研究を進められる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,重み付き射影空間の場合にどのような例が構成できるかを検討する.次に,多様体についてより一般の仮定をした場合に,V-normal crossing特異点を退化因子に許容する対数的シンプレクティック構造の存在がどのような多様体を特徴づけるかという問に取り組む.このときに,Pymによるスキーム上での議論をスタックの場合に一般化する必要があり,特に交点数の議論を適切に処理することが課題になると見込んでいる.
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次年度使用額が生じた理由 |
各研究集会がオンラインで開催され,旅費を支出しなかったため.2022年度以降は旅費が発生すると見込んでいる.また,2021年度は第三回宇都宮大学代数幾何研究集会を開催したが,これもオンラインで開催したため費用が発生しなかった.対面での交流は分野を活性化するためにも有効だと考えているため,2022年度は対面での開催を計画している.その場合は次年度使用額を講演者の旅費の負担に用いることも考慮している.
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