研究課題/領域番号 |
21K20341
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
石井 裕太 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (20912223)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 反応拡散方程式 / パターン形成 / メトリックグラフ / Gierer-Meinhardtモデル / Schnakenbergモデル |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、形態形成モデルとして知られるGierer-Meinhardtモデル(GMモデル)と自己触媒反応モデルとして知られるSchnakenbergモデル(SCモデル)について、メトリックグラフ上でピーク解の解析を行った。まず、それぞれのモデルについて、スターグラフ上でピークの個数が3つ以上の場合の多重ピーク解(ピークを複数個持つ定常解)の存在と線形安定性に関する解析に取り組み、抽象定理に関する結果を得た。更に、抽象定理に基づいて具体例を計算することで、ネットワーク構造の影響を考察した。GMモデルについては、拡散係数に応じてピークの位置と安定性が決定され、特に、ピークの個数と線分の本数が影響を与えることが分かった。一方で、 SCモデルについては、ピークの位置はグラフの幾何構造だけで決まり、特に、線分の長さが安定性へ影響を与えることが分かった。また、線分の長さが1つまたは2つのタイプに分類されることが分かり、モデル特有の興味深い現象を捉えることにも成功した。SCモデルに関する研究成果は単著論文として国際学術雑誌に掲載された。次に、移流項を持ったSCモデルについて、Y字グラフ上で1ピーク解の存在に関する解析を行った。特に、グラフの頂点条件の選択と移流速度の大きさによって、各線分上の移流効果の影響の仕方が変わり、ピークの位置が境界方向または接合点へシフトすることが分かった。この研究成果は現在、単著論文として、国際学術雑誌への投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間非一様な係数を持つGMモデルおよびSCモデルについて、これまでにスターグラフ上の多重ピーク解の存在と安定性に関する抽象定理に関する結果が得られた。今回用いた解析手法は、移流項を持つモデルや多成分モデルにも応用が可能であり、その第一歩として、今回新たに、移流項を持つSCモデルの解析に取り組み、ネットワーク構造と移流効果による1ピーク解への影響を詳細に捉えることに成功した。GMモデルについても、同様の解析が可能であり、今後の研究の発展につながる重要な研究成果でもある。
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今後の研究の推進方策 |
SCモデルに対する解析手法を応用して、移流項を持つGMモデルのピーク解に存在に関する解析に取り組む。特に、ピークの位置に対する移流効果とネットワーク構造の影響を明らかにする。また、多重ピーク解の存在と安定性の解析は1次元区間の場合でも解析されていないため、グラフにおける多重ピーク解の解析にも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度は新型コロナウイルスの感染拡大も落ち着き、対面による研究集会やセミナーも開催されるようになったが、オンラインによる開催も多くあり、参加予定だった国際会議の延期もあった。そのため、旅費の多くが執行できず、次年度使用額が生じた。次年度は延期された国際会議や日本数学会への旅費に充てる。また、対面による研究集会の開催を計画し、招待講演者の旅費や謝金に充てる予定である。
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