研究課題/領域番号 |
21K20342
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 聡 東京工業大学, 理学院, 助教 (20911754)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
キーワード | ファノ多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 / 乗数的エルミート・アインシュタイン計量 / カップルド・ケーラー・アインシュタイン計量 |
研究実績の概要 |
複素幾何学において,標準的なケーラー計量の存在性を多様体の代数幾何的条件で特徴づけることが,中心的位置を占める問題の一つである.非線形偏微分方程式の可解性が代数幾何的条件で特徴づけられ興味深い.ケーラー・アインシュタイン計量に関するYau-Tian-Donaldson予想はその一つで,Chen-Donaldson-Sunにより解決された.その後,様々な研究グループがそれぞれの技術を用いて,この問題の別証明を与えている.現在は,この問題を拡張する流れがある. 今年度は,満渕が導入した乗数的エルミート・アインシュタイン計量と,Hultgren-WittNystromが導入したカップルド・ケーラー・アインシュタイン計量について研究した. 乗数的エルミート・アインシュタイン計量について,中川泰宏氏(熊本大学)と共同研究を行なった.中川氏が導入したKSM多様体上でその計量の存在問題を考察した.KSM多様体はトーリック多様体や射影束をその一例として含み,広いクラスをなす.特に計量が凸多面体上の凸関数を用いて記述できることが利点である.この研究では,乗数的エルミート・アインシュタイン計量の存在性をKSM多様体に付随する凸多面体の組合せ論的条件で特徴づけた.なお,この研究をまとめた論文は学術雑誌に掲載が決定した. カップルド・ケーラー・アインシュタイン計量については,カラビ型汎関数(カップルド・リッチカラビ汎関数とカップルドH-汎関数)を導入し研究を行なった.カラビ型汎関数を代数的不変量で評価するmoment-weight不等式の導出を行なった.また,ヘッシアン公式を導出し,その応用としてカップルド・ケーラー・アインシュタイン計量を許容する多様体の正則自己同型群の構造定理の別証明を得た.なお,この研究をまとめた論文は学術雑誌に掲載が決定した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の標準的ケーラー計量について,その存在性を具体的な多様体(KSM多様体)でチェックすることができるようになったため.また,エネルギー汎関数の無限遠での勾配についてもKSM多様体で計算できるようになったため.
|
今後の研究の推進方策 |
標準的ケーラー計量を許容しない多様体を最適退化と関連付けて研究する予定である.例えば,KSM多様体の最適退化を付随する凸多面体の凸関数として実現する問題が考えられる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究会などが開催されないなど,出張旅費の支出が少なかったため.しかしながら次第に対面での研究会や研究打ち合わせが戻ってきている状況なので,次年度は有効に使用していきたい.
|