本研究では、ツイスト積層二層グラフェンにおけるサイクロトロン共鳴吸収シグナルの積層角度θ依存性を明らかにし、ランダウ準位がθによってどのように動的に変化していくかを調べることを目的として実験を行った。具体的には、スタンプ法を用いて積層角度θ=1.1度(魔法角)付近を狙ってツイスト積層二層グラフェンデバイスを作製し、複数の異なるθをもつ素子に対して中赤外光(波長9.2-10.6 μm)を照射し温度3 K程度の極低温下でサイクロトロン共鳴吸収測定を行った。本研究ではθ=2.0度、1.6度、1.3度のデバイスにおいて極低温測定及びサイクロトロン共鳴吸収測定を行った。これら3つのデバイスのうち、中赤外光照射で今日磁場での光応答シグナルが観測されたのは2.0度のデバイスのみであった。この原因としては、θ=1.1度に近づくにつれバンド構造が大きく変化し、系のランダウ準位間隔が我々のもつ中赤外光ソースであるCO2レーザの波長範囲では吸収が見られないような領域に達しているためであると考えられる。2.0度のデバイスにおいては非常に興味深いシグナルが見られた。今後は1.1度付近のデバイスにおいてもシグナルを観測するため、照射可能な波長範囲を広げる予定である。
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