研究課題
本課題では40Tを越える強磁場領域での熱伝導率測定を実現するため、パルス強磁場を用いた熱伝導率測定システムの開発を目標に研究を実施した。研究機関内における主要な成果を以下に述べる。(1)高速応答が可能な薄膜温度計を利用した非定常法による熱伝導率測定と100ms程度のフラットトップ磁場生成システムを組み合わせて、最大39Tに達するパルス強磁場下熱伝導率測定装置の開発に成功した。また、カーブフィッティング法を用いた解析システムを作成し、外部への熱逃げなども考慮した熱伝導率・熱容量の正確な解析が可能になった。(2)上記の装置を利用し、スピン・ダイマー系物質SrCu2(BO3)2の熱伝導率測定を実施した。ゼロ磁場および弱磁場の熱伝導率・熱容量は既報の結果とよく一致することを確認した。これは本手法の妥当性を示すものである。また、20T以上の強磁場ではスピンギャップの抑制に伴って熱伝導率が強く抑制される挙動が観測された。これは他のスピンギャップ系における磁場応答と定性的に一致しており、測定結果の妥当性を示唆している。(3)弱磁場領域での正確な熱伝導率を簡易に測定するための定常法に基づいた熱伝導率測定装置を開発し、定常磁場下でのテスト測定を行った。また、有機スピン液体物質EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2およびその混晶塩の低温熱伝導率測定の結果を議論し、電子相境界における揺らぎの効果がガラス様の熱伝導特性を生じさせている可能性について報告した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Physical Review B
巻: 107 ページ: 085121
10.1103/PhysRevB.107.085121
arXiv
巻: 2302 ページ: 01627
10.48550/arXiv.2302.01627
巻: 105 ページ: 245133
10.1103/PhysRevB.105.245133