水素貯蔵材料への水素吸蔵・脱離,触媒表面での水素化反応,燃料電池の固体電解質におけるプロトン移動など,水素の拡散は様々な場面で重要である.水素は質量が小さいため,特に低温においては量子的な性質が露わとなる.しかし水素を直接観測することは難しく,これまで低温における固体中の水素拡散はほとんど観測されてこなかった.今回,電気伝導測定およびイオンビームを用いた構造解析を駆使し,低温における水素の拡散頻度の計測と拡散径路の同定に成功した.低温の水素拡散の計測方法を確立した本研究は,水素の量子拡散の本質的理解に向けて重要な意義を持ち,効率的な水素吸蔵など応用面への貢献も期待できる成果である.
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