本研究においてはイッテルビウム171の原子を磁気光学トラップにトラップして30 uKに冷却し、ここに狭線幅化、周波数安定化された431 nmのレーザーの周波数を変化させながら照射することで431 nm遷移の探索を行った。研究は原子のトラップ、冷却の方法の確立を確立するところから始めた。また、レーザー系は既存の治山サファイアレーザーを転用し、ULEキャビティにロックして安定化並びに狭線幅化を行った。確実に431 nmの光を原子に照射するシステムを構築し、遷移が見つかったときのわずかな変化も確実に検出できるように検出器系の安定的な運用を確立したうえで、探索を行った。探索には時間を要したものの、目標であった研究期間内に431 nmの遷移の観測に成功した。初観測の後はレーザーの周波数を固定し、磁気光学トラップを短時間切った間に431 nmのレーザーを照射する方式で分光を行い、周波数シフトなどの測定を行った。これによって絶対周波数を7 kHzの不確かさで測定し、40年以上前の報告に比べて4桁の精度向上を達成し、さらなる精密分光への道を開いた。この測定精度は目標としていたオーダーであり、まずまずの結果である。また、遷移の時期的な性質についても測定した。これらをまとめた論文が年度末時点で論文誌に投稿中である。 本研究は微細構造定数の時間変化の探索や同位体シフトを用いた未知の粒子の探索をはじめとするより精密な分光が必要な研究のための第一歩となる。
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