本研究の目的は、超短パルス電子と液体金属を組み合わせた新しいX線標的の原理実証を行うことである。これにより、X線のパルス性能や輝度、出力を向上させることができ、例えばエンジンやモーターなどの産業機器における動作状態をリアルタイムにイメージングすることが可能となる。 研究最終年度は、ドロップレット方式と呼ばれる液体金属を上方向から滴下する方法に基づいた液体金属フローシステムを完成させた。昨年度設計した電子銃の陰極及び陽極をチタン材を用いて製作することで、放電耐性を高めた。また、光電効果に必要な紫外線はチタンサファイアレーザーからパルスを用いて、構築した3倍波光学系を通すことで生成した。 実験では、液体金属のダミーとして純水を用いて、これにフェムト秒のパルスを照射し、その様子を高速カメラと高出力ランプを用いて、数十マイクロ秒の時間分解能で撮影することによって、ショットの繰返し率について検討した。この時、液体のフロー速度は配管の最小径と押出圧力によって決定される。配管の最小直径は70μmで、押出圧力は最大0.7MPaであった。ショット周波数を1kHzで運転できることがわかった。また、この運転周波数の制限はショットによって発生する衝撃波の伝搬によって配管内から落下してくる液体の乱れた形状によって制限されるという新たな知見が得られた。今後、押出圧力をさらに上げること、さらにショット出力を小さくかつショット面積を小さくすることでこの運転周波数をさらに向上してゆくことが期待できる。
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