研究課題/領域番号 |
21K20362
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
木原 亜美 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究員 (90911371)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | イオントラップ / 光周波数標準 |
研究実績の概要 |
今年度はYbイオンでInイオンを共同冷却する新たなイオントラップ光時計の構築のための準備と並行して光時計システムに組み込む予定の現在稼働中の光時計の改良を実施し、その評価も行った。 まずYbイオンでInイオンを共同冷却するイオントラップ装置の立ち上げ準備として、Ybイオンの捕獲・冷却に必要なレーザー光源の構築と、真空チャンバー内でイオンを捕獲するためのイオントラップ電極の組み立て、そしてイオントラップにRF電場を印加する際に必要なヘリカル共振器の作成を行った。 光源のうちYb中性原子をイオン化するための399nm光源は397nm用の外部共振器型レーザーダイオードを用いてレーザーダイオードの温度、印加する電流、外部共振器を構成する回折格子の角度の調整を行うことで399nmでのシングルモード発振を確認した。その他のドップラー冷却のための波長(369nm)や準安定状態から冷却遷移に戻すためのリポンプ波長(935nm)のレーザー光は研究室内に保管されていたもので動作確認を行い、使用できる状態になるように調整を行った。 イオントラップに印加するRF電場については動径方向のトラップ周波数1MHzを実現させるために、印加するRF周波数と振幅を算出した。これを踏まえて15MHzのRF電場をトラップ電極に印加できるようにヘリカル共振器の構成部品の設計を行い、部品を作製した。 現在稼働中の光時計の改良に関しては、同一研究グループで稼働しているSr光格子時計との光周波数比を水素メーザーを介さずに直接比較する実験を行った。これまで申請者が所属するグループで行われた周波数比較実験では同一の水素メーザーを参照信号とした2台の周波数コムを使っていたため水素メーザーの安定度によって光周波数比の安定度がリミットされていたが、今回同一の周波数コムを使った直接比較を実現させることで短期安定度の向上が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は2021年度中にYbイオンとInイオンの両方をトラップすることを目指していたが、新型コロナウイルスの流行が当初の見通しより終息しておらず、所属機関から在宅勤務の指示が出ていたため思うように作業が進まなかった。2022年1月まで週2日の出勤制限下での業務となったため実地での実験遂行を想定通りに進めるには支障があったことが進捗が遅れている原因である。
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今後の研究の推進方策 |
当初は171Yb+イオンのサイドバンド冷却によって115In+イオンを共同冷却することを目標としていたが、2022年度はサイドバンド冷却の前段階である171Yb+イオンと115In+イオンのドップラー冷却による共同冷却を実現することを目標として計画を変更する。 5月中にYb原子オーブンのみを真空チャンバーに入れてYb原子の蛍光を確認し、その後イオントラップ電極を入れた上で同様にYb原子の蛍光確認をする。その上で、まずは174Yb+イオンの捕獲・冷却とマイクロモーション低減のためのトラップ電極にかける電場の調整を行う。質量数174は171と違って超微細構造を持たないうえに蛍光量も大きいので、扱いが171に比べると容易である。174Yb+イオンを用いて電場の調整まで行った時点でInイオンの捕獲を行い、蛍光確認を試みる。Inイオンの蛍光確認後に、171Yb+イオンの捕獲に向けて磁場の調整や冷却光に電気光学変調器を入れてイオンの状態の超微細準位間の制御を行い、171Yb+イオンの蛍光確認を試みる。 171Ybイオンの蛍光確認ができたら115In+イオンと同時にトラップし、115In+イオンのサイドバンド比から温度を見積もることを今年度の最終目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行の影響により、令和3年度には物品調達に支障が生じた。未使用金は調達支障があった光学部品や計測器を令和4年度に購入するために使用する予定である。
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