この研究は、計画された国内外の多くの連携により推進する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で国際的な交流や出張が制限されたため、一年の延長を行い、合計三年間に渡り研究を行った。当初想定してた密度の国際的協力による関連する成果は得られておらず、この点に関しては、遺憾であるが、客観的には、プロジェクト自体は非常に成功を収めたと考える。三年間で世界的に有名なもの複数を含む約40本の関連研究論文を発表し、直近を除く全ては国際的雑誌に査読を経て掲載されている。30近くの(ほとんどオンライン)の招待公演を行った。これらにより、アクシオンに関連する宇宙の進化とその非線形的な挙動についての理解が深まったと考える。
特に最終年度において、NANOGravによるナノヘルツ程度の重力波のデータの発表がなされたは想定外の出来事であり、研究が著しく促進した。そのデータを説明する可能性として、初期宇宙でQCDと結合するようなアクシオンによる巨視的物体であるアクシオンドメインウォールを提案した。このようなドメインウォールが潰れる衝撃から重力波が発生されるが、その振動数はちょうどナノヘルツ程度であることが予言される。このドメインウォールの生成から消滅までの宇宙論的非線形進化をスーパーコンピュータによる格子計算に基づく第一原理計算により明らかにした。ドメインウォール進化および消滅による重力波の見積もりにおいて、このような宇宙論進化を完全にカバーした研究は世界で初めてである。本研究により、従来考えられていた、ドメインウォール「進化」においての重力波より、「消滅」の場合の重力波の方が圧倒的に強いことを明らかにした本研究は非常に多くの注目を浴びた。
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