本研究成果は、宇宙誕生直後などの初期宇宙において重要となる真空の安定性の理解に貢献する。従来まで用いられた真空崩壊率の計算法であるユークリッド経路積分には、幾らか問題点が指摘されており、それらを克服する新たな計算法の確立の第一歩となる研究成果である。また、素粒子論と重力理論を統合し得る有力な理論として超弦理論が知られているが、この理論では、我々の宇宙のように膨張する時空を包含し難いという性質が知られている。超弦理論で許される高次元空間が非一様な場合でも、そこで生成した真空泡の膨張が我々の宇宙の膨張を模倣することから、異なるスケールの物理が、一貫性を持ってこの宇宙を記述し得る理論的傍証も示した。
|