本研究は、ビッグバンから現在までの銀河形成史における初期段階にあたる、宇宙で最初の銀河 (初代銀河)の形成過程の理論的解明を進めてきた。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げ以降、宇宙初期の銀河の観測は大きく進展し、その結果を最大限活用するためにも、初代銀河の理論的解明の重要性は日々高まっている。 本研究では、様々な物理が絡み合う複雑な現象である初代銀河形成過程を明らかにするために大規模数値流体シミュレーションを用いる。 その際、シミュレーションに小スケールの宇宙物理現象に関する精密な理解を組み込むことで、これまでと比べて、より現実に近い形で初代銀河形成過程を記述する。小スケールの現象として、特に巨大ガス雲からの星団形成過程に着目するが、そのほかにも初代星形成は初代銀河形成に大きな影響を与えたと考えられ、その研究も進めた。 本年度の主な成果は二つに挙げられる。一つ目は、複数の星形成雲を初期条件とした初代星形成のシミュレーションにより、様々な環境で形成する初代星の性質を明らかにしたことである。典型的な初代星形成環境において、初代星は大質量かつ長軌道の連星や多重星として形成することが明らかになった。 二つ目の成果は、最新の星団形成モデルを組み込んだ初代銀河形成シミュレーションをおこない、初代銀河を構成する星の形成過程の解明を進めたことである。様々な物理モデルでの比較計算を通じて、星団からの遠紫外線輻射によってバースト的な星形成が誘起されることを明らかにした。 これまでの研究期間中の研究により、初代銀河過程の物理的理解を進めることができた。その一方で、宇宙初期の銀河の観測的研究の最近の進展と比べて、初代銀河の理論的な理解にはまだ大きな発展の余地があり、今後、本研究をさらに発展させることが重要と考えられる。
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