研究課題/領域番号 |
21K20376
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 紀治 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (20909593)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 軌道進化 |
研究実績の概要 |
「真の惑星軌道傾斜角の分布作成」について、高温星周辺のホットジュピターWASP-33bの真の惑星軌道傾斜角を、惑星公転軸が主星自転軸を中心に歳差する現象すなわち軌道歳差から測定した。その結果、WASP-33bが極軌道を描くことがわかり、形成直後の惑星同士の相互作用による重力散乱、または、外側に存在する伴星との相互作用で軌道進化をしてきた可能性を見出した。この研究で初めて、惑星食による減光を捉えるトランジット測光観測と惑星食によるトランジ ット分光観測のデータから惑星の影を捉えるドップラー・トモグラフィー法 の両方を用いた軌道歳差の検出方法、および、真の惑星軌道傾斜角の測定方法を確立した。この成果について投稿論文で発表し、国内・国際会議で口頭発表を行った。 「高温星周辺のホットジュピターの発見確認」にあたっては、宇宙望遠鏡TESSで減光が確認された2つのホットジュピターの惑星候補に対して、多色撮像カメラMuSCATシリーズで観測をした。その結果、いずれの惑星候補も、減光率がどの波長域フィルターでもほぼ同じ値であったため、連星などによる偽検出ではなく、惑星トランジットによる減光であることを示し、惑星半径が1.7木星半径程度の巨大ガス惑星である可能性を見出した。これらの惑星候補は次の段階でドップラー・トモグラフィー法による発見確認が必要となるので、すばる望遠鏡に搭載されている高分散分光器HDSを使用した観測のプロポーザルを提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真の惑星軌道傾斜角の分布作成については、1つの高温星周辺のホットジュピターの真の惑星軌道傾斜角の値を更新したためである。 また、高温星周辺のホットジュピターの発見確認についてはMuSCATシリーズで偽検出でないことを確認したため、順調に段階を踏んで進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も引き続き、真の惑星軌道傾斜角の測定とホットジュピターの発見確認を行う。特にホットジュピターの発見確認においては、スペインの3m望遠鏡に搭載されているCARMENESの観測も念頭に置いている。 さらに、令和4年度後半は、その時点での高温星周辺の惑星軌道傾斜角分布と、軌道進化モデルでシミュレーションした惑星軌道傾斜角分布の比較も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の研究会発表について、新型コロナウイルス感染拡大防止対策としてオンラインでの発表が可能であり、旅費を使用せずにオンラインで参加したためである。 令和3年度に発見確認された高温星周辺の惑星候補2つについて、すばる望遠鏡のプロポーザルが通らなかった場合にスペインの望遠鏡にある高分散分光器CARMENESで観測を行う予定である。スペイン国外の研究者が使用する場合、1夜分の使用料がおよそ90万円であるため、次年度使用額をCARMENESの観測に使用する。
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