研究課題/領域番号 |
21K20376
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 紀治 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (20909593)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 軌道進化 |
研究実績の概要 |
「真の惑星軌道傾斜角の分布作成」について、恒星面の端(インパクトパラメーター~0.9)をトランジットする高温星周辺のホットジュピターTOI-1518bに対して、宇宙望遠鏡TESSがとらえた2019年と2022年のトランジット測光データから、惑星軌道歳差(惑星公転軸が主星自転軸を中心に歳差する現象)によるインパクトパラメーターの変化をとらえた。この研究成果について、国内の研究会でポスター発表を昨年度2月に行っており、本年度5月の国際学会でもポスター発表を行う。また、2020年に高分散分光器CARMENESで取得したトランジット分光データに対してドップラー・トモグラフィー法の解析も行った。トランジット分光データと測光データを併せた結果について、論文に執筆している最中であり、TOI-1518bの真の惑星軌道傾斜角の概算を行っている。 「高温星周辺のホットジュピターの発見確認」にあたっては、昨年度は宇宙望遠鏡TESSで減光が確認された2つのホットジュピターの惑星候補に対して、多色撮像カメラMuSCATシリーズで観測をした。その結果、惑星候補の1つは、波長域フィルターによって減光率が異なり、背景星による偽検出であった。一方、もう1つの候補については減光率がどの波長域フィルターでもほぼ同じ値であったため、連星や背景星による偽検出ではなく、 惑星トランジットによる減光であることを示し、惑星半径が1.7木星半径程度、公転周期が2.5日のホットジュピターである可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「真の惑星軌道傾斜角の分布作成」および「高温星周辺のホットジュピターの発見確認」のために高分散分光器HIDESを使用する予定であったが、その装置が搭載されている岡山188cmのドームが昨年度故障したため、トランジット分光データを得ることができず、成果を出すのが遅れている。 ただし、MuSCATシリーズによる高温星周辺のホットジュピター候補の発見確認については、さらに1つの惑星候補に対して偽検出でないことを確認しており、順調に段階を踏んで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度後半から岡山県にある、せいめい望遠鏡の高分散分光器GAOES-RVが共同利用で使用可能となるため、宇宙望遠鏡TESSがとらえた惑星候補の1つに対してトランジット分光観測を行い、惑星軌道傾斜角の測定、および、惑星の影をとらえて発見確認を行う予定であり、そのプロポーザルを提出した。 また、昨年度までにMuSCATシリーズで偽検出でないことを確認した3つの惑星候補に対しては、TESSの測光観測によるライトカーブから、Doppler boostingと呼ばれる光度の変化から、惑星質量に制限をかける。また、これらの惑星軌道傾斜角の測定については、TESSが捉えたトランジットライトカーブに対して重力減光を考慮したライトカーブモデルをフィッティングして、測定を行おうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
高分散分光器HIDESによるトランジット分光観測を行う予定であったが、搭載されている岡山188cm望遠鏡のドームが故障したためである。
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