昨年度までに構築した、太陽風その場観測データから磁気フラックスロープの幾何学的構造をモデルフィッティングするプログラムを用いて、今年度は主に2021年10月9日に発生したM1.6フレアおよび付随するコロナ質量放出(CME)の解析を行った。当該イベントは太陽表面におけるフレア爆発をSDO衛星が、噴出したCMEを内部太陽圏に存在するBepiColombo(0.33AU)、Solar Orbiter(0.68AU)、ACE(1AU)、STEREO-A(0.98AU)の4つの探査機が順に観測した。このため、太陽表面における磁気フラックスロープの形成・噴出過程から、磁気フラックスロープの幾何学構造の伝搬中の変化までを一連に解析する好例であった。そこで、まずSDO衛星による太陽表面磁場データなどから、磁気フラックスロープの形成・噴出過程および太陽表面での磁気フラックスロープの軸磁場の向きと対掌性を推定した。次に、内部太陽圏の各地点において、4探査機が取得したCMEその場観測データそれぞれに対し、線形フォースフリー磁場および軸対称の磁気フラックスロープを過程したモデルフィッティング(Marubashi & Lepping 2007をもとに昨年度までに構築したプログラム)を適用することで、各地点における磁気フラックスロープの幾何学構造(軸磁場の向き・半径・対掌性など)を推定した。これらの結果から、太陽表面から噴出した磁気フラックスロープが傍聴しながら動径方向に伝播していたが、1AU到達以前の内部太陽圏において、CMEに先行する太陽風の大規模構造との相互作用で回転や収縮をすることが示唆された。
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