名古屋港から産出したウニ,カニ,貝などを核として形成された炭酸塩コンクリーションを対象に,殻部とコンクリーション部に分けて,鉱物組成分析,安定炭素同位体比分析,放射性炭素年代測定を行い,炭酸塩コンクリーションの成因とコンクリーションの形成年代を検討した. 鉱物組成分析の結果,貝殻はカルサイトとアラゴナイト,カニ殻,ウニ殻はカルサイト,コンクリーション部はドロマイトのピークが認められた.殻部ではカルサイトやアラゴナイトなどが主要鉱物であるのに対し,コンクリーション部ではドロマイトと石英が主要鉱物であった. 殻部の14C年代は貝,ウニ,カニで若干異なる結果となった.これは,古い年代を有する代謝由来炭素の寄与率が生物種によって異なるためと考えられる.また,貝殻とウニ殻のδ13C からそれぞれの代謝由来炭素の寄与率を求め,海水DIC の14Cと代謝由来炭素の14C値を得た.結果はコンクリーション部の14C 年代は,生物遺骸の殻部より数百年ほど古かった.これは,周囲の土壌有機物の古い炭素の存在によるものであることがわかった.この古い有機炭素の影響を除いたコンクリーションの14C年代をコンクリーションがドロマイトであることを考慮して求めると,コンクリーション部の年代は生物遺骸の殻の年代とほぼ同じ年代を示した.生物遺骸がバラバラに分解されず保存されている産状も考慮すると,名古屋港のコンクリーションは,生物の死後に急速にコンクリーション化して形成された可能性が考えられる.
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