2023年度は国際学会で研究成果の発表を行った。7月下旬から8月上旬にシンガポールで開催されたアジア・大洋州地球科学会(AOGS)の年次大会において、1件の口頭発表と1件のポスター発表を行い、2021年度及び2022年度に国際誌に発表した論文3編の成果を発信した。 また、2023年度は二つの研究を実施した。一つは黒潮続流の流路変化の研究である。人工衛星による観測資料の解析から、黒潮続流が過去約30年間でおよそ200kmも北上したことを示した。さらに、高解像度の海洋モデルを用いた数値実験により、この黒潮続流の北上が海上風の変化に起因することを明らかにした。この成果を国際誌(Scientific Reports)に発表した。もう一つは、北西太平洋における海洋熱波の将来予測の研究である。世界で初めて複数シナリオを考慮した高解像度のアンサンブル予測を行い、海洋熱波の地域スケールでの将来変化を不確実性を含め複数シナリオで議論した。この成果も国際誌(Journal of Oceanography)に発表した。 本課題の研究期間全体を通して、黒潮海流系の時間変動に関する多くの知見を得た。例えば、冬季の海上風が黒潮流量変動に支配的な影響力を有しているという発見は本課題の核心的な問いに解答するものであった。それら研究成果は、黒潮海流系の時間変動特性の理解の基礎になるものである。加えて、本課題では黒潮海流系が海面水温場に及ぼす影響など、発展的なテーマにも取り組み、成果を上げることができた。黒潮海流系が海洋場や大気場に大きな影響を及ぼすことを示すことができた。
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