本研究課題は,惑星の前駆体である小天体「微惑星」の起源解明に向けて,固体微粒子(ダスト)の衝突成長と原始惑星系円盤の流体力学的不安定性によるダスト集積過程を明らかにするものである. まずダスト成長が駆動する不安定性(coagulation instability)の成長過程を,線形解析と数値シミュレーションを用いて調べた.その結果,非線形成長の末に円盤赤道面でのダスト-ガス比が1程度の濃集領域が形成されることがわかった.そこではガスへの反作用のために衝突速度が低下し,破壊問題が緩和されダストがさらに大きく成長し得ることがわかった.こうした領域では,永年重力不安定性を介した微惑星形成が起こりえる.その条件は多次元線形解析でも精査した.これらの成果をまとめた複数の論文は既に出版済みである.またサイズ分布を考慮したシミュレーションコードの開発も進めた.最終年度には計算を実施し,摂動波長が長い場合は,相対的なドリフト運動によって摂動がかき消される前に,その振幅が僅かに増幅される様子を捉えることができた.またサイズ分布の幅の効果を模擬したモデル方程式の解析から,短波長モードが安定化されることを確認できた. さらに最終年度はストリーミング不安定性とダスト成長の共発展の可能性を探求した.この不安定性は上記2つの不安定性より小さいスケールで起こるため,ダスト衝突過程とより密接に関連している可能性がある.そこでまず,先行研究に基づきダストの成長時間と不安定性による集積時間を比較した.その結果,従来仮定されていたパラメータの範囲で成長と集積が同時に進行する進化線を見出すことができた.この結果を論文としてまとめ出版した.また実際に数値シミュレーションも行い衝突率を測定した.その結果,単一サイズのダストの場合は衝突時間が動径移動時間より短く,ストリーミング不安定性がダスト成長を促進し得るとわかった.
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