研究課題
電気火災に関与する電気ケーブルやプリント基板は,可燃性固体と金属材料が一体化した複合材であり,その燃焼性は可燃性固体単体時のものとは著しく異なる.このような複合材の燃焼機構を明らかにすること,さらに燃焼特性を定量的に評価可能な試験法を開発することを目的として,本研究では,市販のプリント基板ならびにアクリル板に銅箔テープを貼り付けた自作試料を用いて下方燃え拡がり試験を行った.燃え拡がり速度,火炎形状,限界酸素濃度(火炎が消炎に至る酸素濃度)に対する試料幅,各種材料の厚み,試料側面の状態の影響を実験的に明らかにした.従来,プラスチックや布材等の難燃性を評価する際に行われる下方向燃え拡がり試験では,矩形状の材料を用意して,その四隅を金属板などの不活性材料で囲い下方燃え拡がりを観察する.これは試料の表面を一様に火炎が燃え拡がることを実現させるためである.しかし,同じ試験法を複合材に適用すると,銅箔から金属板への熱損失が起こり,材料が非常に燃えにくくなることを明らかにした.さらに,金属板近傍の燃え拡がり火炎が消炎してしまい,燃え拡がりに三次元的効果が生まれ,試験結果の一般性が損なわれてしまうことを明らかにした.複合材の燃え拡がり試験で,試料の保持方法や試料形状の効果が現れない,一般性の高い試験結果を得るために,試料側面と金属板の間に火炎の消炎距離相当の空間を設けて試験を実施した.その結果,試料の燃焼性が向上し,燃え拡がり火炎も試料に沿って一様に進行し,二次元的な燃焼現象が確認できることを明らかにした.また,二次元的な燃焼現象を観察するための,試料側面と金属板の距離は,試料の形状に依存することを実験的に明らかにした.
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Proceedings of the Combustion Institute
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10.1016/j.proci.2022.07.002