近年,環境負荷問題の深刻化に伴う二酸化炭素の排出量削減の要請に対し,輸送機器の軽量化を目的として,超軽量・高強度を有する新規耐熱チタンTi合金の開発が期待されている.この実現に向け,Mg,Al合金で開発が進められている軟質層と硬質層の層状組織化に注目した.本研究ではTi-Co合金に着目し,硬質・軟質相から成る複相合金中の層状組織の微細化と一方向性凝固を組み合わせた「極微細配向化組織制御」の実現を目指した. 本研究では,Ti-Co共晶合金,Ti-Co亜共晶合金,Ti-Co過共晶合金をアーク溶解,一方向性凝固により作製した.作製した合金に対してXRD解析による構成相の評価,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡による微細組織観察を行ったところ,アーク溶解で作製したいずれの合金においても層状組織が観察され,一方向性凝固により作製したTi-Co共晶合金においては,著しく微細なナノラメラ組織が観察された. 室温,600℃における圧縮試験およびナノインデンテーション試験により力学特性の評価を行った.圧縮試験の結果,一方向性凝固Ti-Co共晶合金では,室温試験において,2 GPaに迫る高い降伏強度が得られた.一方,600℃の試験では,過共晶合金が最も高い降伏強度を示した.圧縮試験後の組織観察の結果,いずれの合金においても層間の界面拘束効果による新たな局所変形モードの誘起による強化は実現できなかった.この理由として,層状組織の配向性が低かったこと,また層状組織の形態が完全な板状ではなく多くの部分で棒状であったことなどが考えられる.すなわち,さらなる強化の誘導には,層状組織の形態制御が重要であることが示唆された.
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