研究課題
高Mn鋼は、非常に加工硬化能が高く、高強度と高延性の両方を兼ね備えており、次世代構造用金属材料として注目されている。一方、一部の高Mn鋼では、その引張挙動を示す応力-ひずみ曲線上にセレーションと呼ばれる鋸歯状の応力振動が見られ、さらに加工硬化能を向上させることが知られている。しかしながら、セレーションに関する研究においては、ミクロな現象とマクロな現象の理解が進まなかったため、そのメカニズムは不明だった。本研究では、引張変形中Portevin-le Chatelier(PLC)バンドとして特徴付けられるマクロ不均一変形帯の力学特性への役割を明らかにした上で、可動転位と溶質原子の相互作用というミクロスケールの解析を行い、セレーションの本質をあらゆるスケールで解明した。引張試験中にその場中性子回折とデジタル画像相関(DIC:Digital Image Correlation)法を併用しながら実施し、PLCバンドの通過に伴なう加工硬化の素過程を理解した。試験片平行部中の一点に中性子ビームを照射し、観察領域における欠陥密度の変化、局所応力を定量的に評価し、PLCバンドの通過と同期させて解析を行うことで、PLCバンドの連続的な伝播に伴なう局所応力の変化と、試験片全体の加工硬化の進行を結びつけて理解した。また、引張試験中にDIC法と放射光X線回折を同時に用いて、PLCバンドの内外の局所ひずみ速度分布および転位密度を定量化した。PLCバンドの外側における転位速度は、可動転位が炭素に固着されたため遅い転位速度を示した。一方、PLCバンドの中側では、炭素の固着から転位が離脱したため、速い転位速度を示した。つまり、PLCバンドの位置を考慮した局所的なPLC効果(またはDSA効果)の解析ができた。
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Materials Science and Engineering: A
巻: 862 ページ: 144506~144506
10.1016/j.msea.2022.144506
巻: 874 ページ: 145089~145089
10.1016/j.msea.2023.145089