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2021 年度 実施状況報告書

秩序渦の階層から紐解く乱流輸送現象とその予測

研究課題

研究課題/領域番号 21K20403
研究機関大阪大学

研究代表者

本告 遊太郎  大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20906911)

研究期間 (年度) 2021-08-30 – 2023-03-31
キーワード乱流 / 混相流 / 秩序構造 / 渦 / エネルギーカスケード / 数値シミュレーション
研究実績の概要

2021年度は、(1)固体粒子や(2)温度や濃度といったパッシブスカラーが、乱流中でどのように輸送されるかを重点的に調べ、乱流による物質輸送に関する新たな知見を得ることができた。具体的な研究成果は、以下の通りである。(1)平行平板間乱流中に微小で重い粒子を分散させた数値シミュレーションを実行し、乱流中の大小さまざまな大きさの渦により、粒子の輸送を説明できることを示した。つまり、乱流中の渦の階層により、粒子の運動を予測することができる。(2)周期境界条件下の乱流中におけるパッシブスカラーの数値シミュレーションも実行し、乱流だけでなく、スカラーの変動も階層に分けることで、スカラー輸送に果たす渦の階層の役割を明らかにした。これらの結果を国内外の学会で発表し、とくに(1)の結果は、流体力学に関する国際誌で発表した。(3)新たに、2つの混相流の数値シミュレーションプログラムも開発した。ひとつは流体と有限の大きさをもつ粒子を連成させて解く数値シミュレーションであり、粒子の質量密度と大きさを変えることで、今後、さまざまな種類の粒子の輸送を調べる。また、気体と液体の混相流の数値シミュレーションプログラムも開発した。すでに、富岳などのスパコン上で実行しており、予備的な結果も得た。

乱流輸送の動力学を明らかにするためには、いつ・どこで・何が起こっているかを、まず物理空間で観察する必要がある。しかし、混相流の数値シミュレーションから得られるデータは巨大であるため、やみくもにそれらを出力し、後から処理して可視化するのは効率的ではない。そこで、数値シミュレーションをしながら、可視化に必要なポリゴンのみを出力するプログラムも新たに導入した。これを駆使すれば、今後の研究のさらなる発展が期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね当初の計画通り、研究を遂行できた。(1)乱流による微小な粒子の輸送に関する新たな知見を得ることができ、その成果は国内外からも評価され、流体力学の一流誌にも掲載された。有限の大きさをもつ粒子の数値シミュレーションプログラムも開発し、あらゆる種類の粒子の輸送を系統的に調べる準備もできた。(2)さらに、計画にはなかったが、パッシブスカラーの輸送の研究にも着手した。乱流中の渦の階層に関するこれまでの知見と、我々独自の解析を通じて、予備的な結果ではあるが、乱流によるスカラー輸送に関しても新たな知見を得ることができた。(3)自由界面を伴う数値シミュレーションプログラムも開発した。得られる巨大なデータをすべて出力し、事後処理するのは限界を感じたため、乱流の可視化に必要な面データのみを出力するプログラムも導入した。この解析方法は当初の計画にはなかったが、あらゆる数値シミュレーションの可視化に有効であり、(1)と(2)の研究にも貢献すると期待される。

今後の研究の推進方策

今後は、(1)固体粒子や(2)パッシブスカラーの輸送に関する知見をより深めるとともに、(3)新たに、自由界面を伴う乱流の数値シミュレーションを実行する。

(1)流体と粒子が相互作用する、連成数値シミュレーションを駆使し、固体粒子による輸送、さらに、粒子による乱流変調の仕組みを明らかにする。これまでの我々の結果によれば、粒子の輸送は、乱流中の大小さまざまな渦の階層で決まるため、粒子が乱流を促進したり抑制したりする仕組みも、渦の階層で説明できると期待される。この着眼点の下、今後も研究を進める。(2)スカラーの輸送に関しても、今年度得た予備的な(低いレイノルズ数における)結果が、発達した乱流においても整合的であるかを、大規模数値シミュレーションを実行し調べる。(3)気液二相流の数値シミュレーションを実行し、自由界面による影響を系統的なパラメータサーベイにより明らかにする。得られた生データをすべて出力しポスト処理するのでなく、スパコン上でシミュレートしながらリアルタイムで渦の階層にわけ、さらに、可視化に必要な面データに圧縮することで、混相乱流中の渦の階層を詳細に観察し、その動力学を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

差額は、19,887円で、ほとんど計画通り使用した。繰り越し額は本研究の柱である、スーパーコンピュータの計算資源(名古屋大学・不老)に使用する予定である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Role of the hierarchy of coherent structures in the transport of heavy small particles in turbulent channel flow2022

    • 著者名/発表者名
      Yutaro Motoori, ChiKuen Wong, Susumu Goto
    • 雑誌名

      Journal of Fluid Mechanics

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 壁乱流中の秩序構造の階層による粒子の輸送2022

    • 著者名/発表者名
      本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      第37回生研TSFDシンポジウム
  • [学会発表] リザバーコンピューティングを用いた壁乱流の秩序構造の推定2022

    • 著者名/発表者名
      森脇渉太,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本機械学会 関西支部 2021年度関西学生会卒業研究発表講演会
  • [学会発表] イルカの背びれ周りの流れの解明に向けた数値シミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      村端秀基,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本機械学会 関西支部 2021年度関西学生会卒業研究発表講演会
  • [学会発表] 高分子溶液のレオロジー特性の解明に向けた2つの異なるスケールの連成シミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      増田颯人,小井手祐介,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本機械学会 関西支部 2021年度関西学生会卒業研究発表講演会
  • [学会発表] 強化学習による流れの能動制御の実験と数値シミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      江田駿介,藤嶋歩里,中谷謙介,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本機械学会 関西支部 2021年度関西学生会卒業研究発表講演会
  • [学会発表] 非球形粒子の乱流輸送現象の解明へ向けた直接数値シミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      安房井英人,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本機械学会 関西支部 2021年度関西学生会卒業研究発表講演会
  • [学会発表] 円柱背後の乱流中における渦の階層とその生成機構2022

    • 著者名/発表者名
      藤野潤,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本物理学会第77回年次大会(2022年)
  • [学会発表] Hierarchy of coherent structures and energy cascade in wall-bounded turbulence2021

    • 著者名/発表者名
      Yutaro Motoori, Susumu Goto
    • 学会等名
      25th International Congress of Theoretical and Applied Mechanics (ICTAM25)
    • 国際学会
  • [学会発表] 十分に発達した乱流中における固体粒子の輸送現象と乱流変調2021

    • 著者名/発表者名
      本告遊太郎,岡温,後藤晋
    • 学会等名
      プラズマシミュレータシンポジウム2021
  • [学会発表] 渦の階層で紐解く乱流中の固体粒子の輸送現象2021

    • 著者名/発表者名
      本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [学会発表] 機械学習を用いた時系列データからの乱流場推定2021

    • 著者名/発表者名
      中谷謙介,犬伏正信,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      日本流体力学会年会
  • [学会発表] 機械学習を用いた2次元角柱後流の乱流場推定2021

    • 著者名/発表者名
      犬伏正信,中谷謙介,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      第64回自動制御連合講演会
  • [学会発表] 渦伸長に基づいた円柱背後の乱流の維持機構2021

    • 著者名/発表者名
      藤野潤,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      第35回数値流体力学シンポジウム
  • [学会発表] 自由表面近傍に配置された円柱後流の直接数値シミュレーション2021

    • 著者名/発表者名
      渡邊大記,藤野潤,本告遊太郎,後藤晋
    • 学会等名
      第35回数値流体力学シンポジウム
  • [学会発表] 渦の階層に基づく高レイノルズ数乱流中の物質輸送と混合2021

    • 著者名/発表者名
      本告遊太郎,沖田和也,後藤晋
    • 学会等名
      第35回数値流体力学シンポジウム

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公開日: 2022-12-28  

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