本年度は,眼球機構の高速応答・小型化を実現するために従来の1自由度ボイスコイルアクチュエータ(VCA)を2自由度駆動可能とした2コイル2自由度VCAの開発を行った。本アクチュエータは回転子が2コイルだけで構成できるため,回転部の軽量化から応答の高速化が可能である。また,2個のコイルと2個の永久磁石によって2軸まわりトルクを発生可能なため,部品点数が少なく,小型化に貢献する。これまで,3次元有限要素法を用いた磁場解析から姿勢変化時のトルク特性を明らかとしている。しかし,その動的モデリング手法および動特性は未だ示されていなかった。そこでまず,オイラー角により姿勢を表現し,ラグランジュ方程式からトルクを入力,姿勢を出力とした運動方程式を導出した。次に,電圧を入力,電流を出力とする回路方程式を立て,様々な姿勢で電流を与えた際のトルクを得るトルク発生式を導出した。これらの導出式を連成することで多自由度駆動モデルを構築し,時間発展計算により動特性を評価可能なシミュレーションモデルを構築した。そして,構築した動的モデルの挙動と3次元有限要素法動解析の結果を比較し,両者の一致から妥当性を確認した。なお,トルク発生式においては多自由度回転時のトルク特性の非線形性を考慮しており,これにより挙動の一致が得られた。有限要素法動解析と比較して,角度と電流が一致することから,機械的ダイナミクスおよび電気的ダイナミクスにおいても構築モデルによって再現可能であることを明らかとした。
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