2022年度は,災害タスク(被災者の捜索,狭隘な隙間の通り抜け)に対する応用実験を行った.被災者の探索では,カメラを平行リンクモジュールに固定することで,ホバリング状態でロール・ピッチ方向にカメラをチルトできることを確認した.これにより,従来ドローンでは必須のジンバル(カメラの向きを変える装置)なしで探索タスクを遂行できる.狭隘な隙間の通り抜けでは,機体幅を従来ドローンの状態から約30%減少できた.しかしながら,ホバリング効率を維持するためにロータ面が重ならないように設計しているため,さらなる機体幅の減少にはフレーム構造の工夫が必要である.
研究期間全体(2021年度と2022年度)を通じて,本研究の目的である汎用性の高い変形ドローンを創造し,様々な災害時タスクへの応用例を示すことができた.はじめに,平行リンク機構をうまく利用することで,3個の追加アクチュエータのみで,推力損失なく,ロール・ピッチ・ヨー軸まわりに変形できるフレーム構造を提案した.提案フレームは平行四辺形・菱形・V字のような多様な形状に変形でき,どのような変形状態でもホバリング効率が低下しない.つぎに,空中変形を伴うホバリング飛行実験により,提案フレームの変形機能を確認した.さらに,その変形機能を災害時タスク(被災者の捜索,狭隘な隙間の通り抜け,支援物資の輸送,パーチング)に応用できることを示した. これらの研究成果は,国際会議1件と国内会議1件で発表し,それぞれSICE International Young Authors Award (SIYA-IROS2022)と日本ロボット学会 第4回優秀研究・技術賞を受賞した.これらの内容をまとめて,国際学術論文誌1本に掲載された.この論文に対して,日本ドローンコンソーシアムJDCから第2回日本ドローンコンソーシアム表彰を受賞し,本研究は高く評価されている.
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